総合導入迫るマイナンバーで何が便利になるのか
日本に住むすべての人に割り振られる社会保障・税番号(マイナンバー)制度が2016年1月からスタートする。税や社会保障に関する個人情報を国・自治体が1人1個の番号でひも付けし、公正・公平できめ細かな社会保障などの行政サービスを実現することが狙いだ。外国籍の住民を含め、住民票を持つ人に2015年10月から12ケタの個人番号が通知される。
しかし、認知度は低い。1月に行われた内閣府のアンケート調査によると、「制度の内容まで知っていた」と答えた人はわずか28.3%にすぎない(右下図)。
企業はマイナンバーで、煩雑な対応を迫られる
企業でも「社内の対応をまだ検討していない」「具体的な対応策がわからない」という声が上がる。制度が始まると、企業はマイナンバーを管理する担当者や規定を定め、鍵付きのキャビネットに番号を記載した書類を保管するなど、従業員の番号を厳格に管理しなければならない。
大企業の認知度は比較的高い。が、中小・零細企業となると、「東京はまだましだが、地方に行くと、そもそもマイナンバーのことを知らない経営者が多い」(日本商工会議所)。
日本税理士会連合会の浅田恒博専務理事は「たとえば、居住空間と一緒のマンションの一室で事業を営むような個人事業主に、適切な安全管理措置をどこまで徹底できるのか」と懸念する。
2016年1月からは、ICチップを搭載した個人番号カードの無料配付が始まる。総務省は、2016年1~3月に全国民の約1割、1000万人がカードの受け取りを申請すると見込んでいる。2015年度の政府予算は、1000万枚のカード代として、約220億円を計上している。
単純計算で、国民全員にICカードを配るのに約2000億円かかる。加えて、システム関連費用として2700億円を投じるとみられる。
メリットの実感は2017年7月以降か
しかし、これだけの税金を使っても、マイナンバーのメリットはすぐには実感しにくい。役所への申請の際に住民票や課税証明書などの添付書類がマイナンバーによって不要になるのは、市区町村同士の情報連携がスタートする17年7月以降になるからだ。
野村総合研究所の梅屋真一郎・制度戦略研究室室長は「制度がスタートしても、いきなり目に見える劇的な効果は出てこないだろう。カードを国民のほぼ全員に配り終えるのに最低数年はかかるとみられているが、国民の半分が持つようになれば、便利になり始めてガラリと変わる」と制度の将来性に期待を込める。
一方、マイナンバー制度に対する懸念は、依然として残る。番号は住民票記載の住所に通知されるが、事情があって現住所と住民票の記載とが異なる人も存在する。
情報問題対策委員会の委員を務める清水勉弁護士は「ドメスティックバイオレンスやヤミ金融などに追われ、住民票記載の住所で暮らしていない人が相当数存在する。もし番号がなければ働くことはできないというのであれば、マイナンバーがきっかけになって、そういう人を裏の世界に追いやってしまう危険性がある」と指摘している。

