総合非正規雇用、本当は何人 統計40超、100万人の開き
働く人の3割を占めるとされる非正規雇用は何人いるのか。パートやアルバイト、派遣など多様な形態があり、待遇の改善や的を絞った支援策を練るには正確な実態の把握が欠かせない。ところが政府の関連統計は約40もあり、定義や範囲がバラバラだ。政府内で横断的に統計を見直し、使いやすくする取り組みが遅ればせながら始まった。
正社員ではない非正規雇用を巡り政府は様々な調査をしている。厚生労働省は人口移動調査や賃金構造基本統計調査など17の調査を持ち、総務省にも労働力調査やサービス産業動向調査など11ある。これに農林漁業を担当する農林水産省や建設業をみる国土交通省、主に製造業に聞く経済産業省など省益を支える各種の調査が加わり、全体で41もの統計がある。
業種の違いに加えて、労働者である個人に尋ねるか、それとも雇う事業所に聞くかで手法は大きく分かれる。設問も調査ごとに細かく異なり、結果として全体像がつかみにくくなっている。
例えば総務省の労働力調査で非正規雇用の数を調べると「役員を除く雇用者のうちの非正規」として1908万人(2013年7~9月平均)という結果になる。一方、同じ総務省の経済センサスでは「常用雇用者のうちの正社員以外」と「臨時雇用者」を足す必要があり、それによれば2040万人(12年2月1日時点)となり、100万人以上の開きが出る。
労働力調査や雇用構造調査などは雇用契約が有期か無期かを分けて調べるが、経済センサスや毎月勤労統計には区分がない。区分がなければ有期契約を繰り返して長く働く人を、正規雇用と見誤る恐れもある。
安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」は、デフレからの脱却と賃金の上昇を目標に掲げる。にもかかわらず働く人の賃金を毎月調べる毎月勤労統計で、正規と非正規の賃金が別々に把握できていない。「定義が統一され体系的に整備されれば、統計から得られる情報が深まり、適切な政策が打てる」と内閣府の幹部も認める問題だ。
政府の統計委員会の委員長で労働経済学が専門の樋口美雄慶大教授は「正規になりたいのになれない『不本意非正規』と、短時間の労働を選んでいる『あえて非正規』の人がいる。『不本意非正規』の人に必要な政策を打つには、定義を明確に分類し直すことが非常に重要」と指摘する。
有識者でつくる統計委は複数の統計で同じ定義や区分を採用するよう提言した。指摘を踏まえ厚労省は(1)契約の期間(有期か無期か)(2)契約の形態(直接か間接か)(3)労働時間の長さ――の3つの視点で整理しなおす案を提示。これにより派遣社員か、直接雇用のパートかなど、同じ非正規でも雇用の形態別につかめるという。統計委は来年度から厚労省案をもとに、各省庁に対し統計の見直しを求める方針だ。
米国では労働統計局(BLS)が雇用関係の統計をほぼ一手に管理し、カナダは統計局がすべての調査を網羅して担う。日本のように省庁ごとにバラバラの対応を残す方が異色のようだ。
きめ細かい政策を素早く決めるには、実態をできるだけリアルタイムでつかむことが望ましい。樋口氏は「政府全体として非正規雇用の人数や労働時間、賃金、契約期間、勤続年数、仕事の内容などを継続的に把握できるように統計を整備することは政策の立案に欠かせない」と語る。