リクルート、成長加速の”3段ロケット”

総合リクルート、成長加速の”3段ロケット”

「『リクルートの強みは何か』ということをあらためて自問自答し、考え尽くした数年間でした。その結果たどり着いた答えが分社化、株式公開を目指す、さらにはグローバルに大きく舵を切るの3点です」――。

2012年8月、週刊東洋経済の特集「リクルートの正体」のインタビューで峰岸真澄社長はこう述べていた。1点目の分社化は同年10月に実施。グループ全体の成長戦略策定とその実現に集中するため、リクルートを持ち株会社として会社分割を行い、社名を「リクルートホールディングス」に変えた。

そして2点目が今回の株式公開だ。9月10日、東京証券取引所は同社の上場を承認。上場日は10月16日を予定しており、公募の新株発行と自己株処分による資金調達規模は800億円近く。上場後の株式数と想定発行価格から計算した時価総額は1.6兆円と、今年最大規模の株式上場となりそうだ。

調達資金の使い途は?

この資金使途について、リクルートは一部を借入金の返済に充てるほか、「長期ビジョン実現のための成長投資に充当する」と説明している。長期ビジョンとは、2020年をメドに人材メディア事業と人材派遣事業で世界トップになること、さらに2030年をメドにグループ全体が提供するすべての事業領域で、世界トップのプラットフォームを展開する企業になるというもの。

株式公開で手にする資金は、競争力の強化に向けたシステム投資や、事業基盤を拡大するためのM&A資金に充当する。これが3点目の「グローバルに大きく舵を切る」につながるのだろう。

1960年に江副浩正氏(13年に死去)が大学新聞に企業の求人広告を掲載し、学生に求人情報を提供する「大学新聞広告社」を創業したのがリクルートの始まり。今では連結子会社119社、関連会社9社(14年7月末)を抱える。連結ベースの総資産は約8600億円あり、売上高は約1.2兆円で純利益が654億円。地域別でみると日本の売上高が8割近くを占め、残りの約2割強はほとんどが北米という構成になっている(いずれも14年3月期)。

「リクルート○○」という社名はあまた見られるが、それがどのような形で1兆円を超す売上高を形成しているのか。14年3月期の実績を事業セグメント別にみると、全体の売上高のうち約半分6000億円を占めるのが「人材派遣」の事業だ。国内の主要会社にはリクルートスタッフィングと、07年に買収したスタッフサービス・ホールディングスがある。

9月10日に公表された有価証券報告書によれば、この2社合計で約3000億円の売上高、当期純利益は90億円近くある。人材派遣は国内だけでなく、北米や欧州でもサービスを展開している。今後もM&Aなどによる事業展開を推し進める方針だ。

利益率が高い「販促メディア」事業

「リクルート」。名前は知っていても、事業内容は端的に説明しにくい?(撮影:尾形文繁)

次に売上高が大きいのが「販促メディア」の事業セグメントで約3200億円。このカテゴリーに含まれるのが、「SUUMO(スーモ)」で住宅関連の情報誌やサイトなどを運営するリクルート住まいカンパニー(14年3月期は純利益28億円)。結婚情報の「ゼクシィ」、自動車関連サービスの「カーセンサー」などを提供するリクルートマーケティングパートナーズ(同30億円)がある。ほかにも、「じゃらん」や「HotPepperグルメ」など日常消費の領域でサービスを行うリクルートライフスタイルの純利益が46億円と大きい。いずれも、12年の持ち株会社化に伴って新設された会社だ。

販促メディア事業の特徴は利益率の高さ。売上高は人材派遣事業の約半分だが、利益は951億円と人材派遣業の3倍近く(営業利益を調整した金額。減価却費やのれん償却額などの控除前)あり、セグメント別では販促メディアの利益が最も大きい。

残る主要な事業セグメントが「人材メディア」の事業で売上げ規模は約2600億円。国内事業の主要会社は、学生向けの就職情報サイト「リクナビ」などを展開するリクルートキャリアで、14年3月は売上高が676億円、純利益が約67億円。「フロム・エー ナビ」や「タウンワーク」といったアルバイト情報や求人情報誌などを手がけるリクルートジョブズも純利益は46億円ある。海外における求人情報検索サイトを運営するIndeed社は12年の買収で傘下に入れた企業で、ユーザー基盤の強化に力を入れている。

グローバルナンバーワンの道のり

さらなる拡大に向けた課題はないのか。リクルートでは有価証券報告書の「事業等のリスク」の中で「サービス提供媒体に伴うリスク」をその1つに挙げている。同社が事業展開する多くの市場で、フリーペーパーや雑誌など従来の紙媒体から、オンラインサービスへの移行が進んでいることがその理由だ。そして、国内外のSNSなどを利用したオンラインのコミュニケーションが活発化することで、人材メディア事業と人材派遣事業で「競争が更に激しくなる可能性があります」としている。

紙からネットという事業環境の変化に対し、12年のインタビューで峰岸社長は「リクルートの使命は、(ポータルサイトなどで)どれだけ人を集めるかではなく、生活者、消費者と企業を結びつける、『マッチングプレーヤー』としての役割を担うことです。よい就職ができた、よい人材を獲得できたと、双方に満足いただけるサービスをいかに提供していくかに重点を置いています」と話している。

競争の場は紙からネットへ移行(写真は2012年、撮影:尾形文繁)

峰岸氏(50)がリクルート社長に就任したのは48才の時。週刊東洋経済の特集「リクルートの正体」で江副浩正氏は、「柏木斉前社長は私の秘書でしたが、峰岸真澄社長と現役時代に一緒に働いたことはなく、人柄もよく知らないのです。今回の社長就任のあいさつに来訪されたときに、10分ほど話しをした程度ですよ」と語っていた。

今15年3月期は売上高が前期比約8%増の1兆2900億円、営業利益は同3%増の1210億円の見通し。「グローバルナンバーワン」を旗頭にさらなる拡大を推し進めるリクルート。長期ビジョンの”第1段階”は人材事業と人材派遣事業で世界トップを目指す2020年だ。株式上場後は、ネットに対応した事業のさらなる拡充と、M&Aを活用した海外展開の加速がポイントになりそうだ。