総合トップ営業マンが「メモ」を絶対におろそかにしない理由
ビジネスの現場で「メモを取ることは重要だ」といわれるが、顧客との簡単な打ち合わせでは、メモを取らない営業マンは意外と多い。日常的にメモを取るか、取らないかで営業成績にも「大きな差」がついてしまう。(営業サポート・コンサルティング代表取締役、営業コンサルタント 菊原智明)
「メモは大切」と思っても
実際にやっている営業マンは少ない
今、本屋さんに行くと「メモ関係の本」がたくさん並んでいる。あなたも目にしたことがあるだろう。その中でも若手の起業家が書いた本はベストセラーになっている。その著者はテレビなどに出演し、メモの方法を公開したりしており、注目を集めている。
ちょっとした「メモブーム」といってもいい。
基本的にメモ関係の本は「大切な内容はそのままにせずメモした方がいい」といったことが書いてある。
実は、どの著者の本もそれほど変わった内容は書いていない。私もその1人であるが…。メモ自体は難しいノウハウではないのだ。
「メモは大切だ」と聞いて否定する人はいないだろう。実際、メモの効果を知らない人はほぼいない。やれば間違いなく効果があり、結果も出る。
にもかかわらず、実行率は低い。メモほど「知っているのにやっていない」というノウハウはない。
実際の話、お客様にヒアリングする際、「手帳やノートにメモを取る」といった行為がきちんとできる人がどれほどいるだろうか?
以前、顧客管理ソフトの営業マンと商談した時のことだ。
都内のカフェでお会いし、要望をお伝えした。目をよく見てしっかり聞いてくれたが、メモはしない。大事なことを話しながらも、ちょっとだけ《大丈夫かなぁ…》と心配になった。ただ、そんなに要望は多くない。
まあ《この程度の内容ならば、大丈夫だろう》と思いながらその日は別れた。
そして後日、提案書が事務所へ郵送されていた。その提案書を見てガッカリした。まったく、見当はずれの提案だったからだ。
こちらは、顧客管理について何よりもシンプルさを重視していた。細かい情報の入力なぞ必要としていない。
にもかかわらず、要らぬ入力フォームがいくつも入っていた。そのことを電話で指摘したところ「あぁ!そうでしたね。すみません」と平謝りした。
この営業マンは悪い人ではない。人が良くて、営業トークもあまり上手ではない。誠実そうであり、私の好きなタイプの営業マンでもある。
しかし、この提案はいただけない。すぐさま「もう一度出し直しますから」と言ってきたが、頼む気にはなれなかった。当然のことながら、この話はお断りした。
メモをしなかったために起きる
凡ミスはもったいない
聞いていた要望をメモしなかったために忘れてしまう。これは本当にもったいないミスだ。
お客様から話を聞いている時は《この程度の内容なら覚えているだろう》といった感じがする。しかし、どうだろう?
1日経ち、2日経つと《あれ?どっちだっけ》と曖昧になる。人の記憶はそんなものだ。
時間の経過とともに忘却率の増大を示した「エビングハウスの忘却曲線」によると、
・20分後には42%忘れる
・1時間後には56%忘れる
・9時間後には64%忘れる
・1日後には67%忘れる
・2日後には72%忘れる
といったデータがあるという。
もちろん個人差はあると思うが、人の記憶はこんなものだろう。
試しに、2日前のランチを思い出してみてほしい。よほどインパクトのある料理でない限り、忘れているものだ。
お客様から嫌われて売れないのなら仕方がない。あきらめもつくだろう。
しかし、単に忘れたための凡ミスでチャンスを失うのは悔しいもの。メモをしていれば簡単に防げたことだからだ。
その一方、トップ営業マンはお客様から要望を聞く際、必ずメモをする。重要な案件に関しては、マーカーで目立つように工夫もする。だからこそ、要望モレなどなく、的を射た提案ができる。このように、メモ1つで大きな差になるものだ。
トップ営業マンはメモを重視し、苦戦している営業マンは軽視している。メモの力をあなどってはいけない。
メモを取ることは
クレーム対応にも役立つ
実は、メモには「大事なことを忘れなくなる」ということ以外にも、意外な効果がある。それは“クレームの対処に効果的”ということだ。
クレームでお客様に呼ばれた際、まずは話を聞く。聞いているうちに《それは勘違いだろう》という部分が出てくるもの。しばらくは聞いていたものの、思わず「それは契約の時も説明しましたが…」と口を挟んでしまうこともあるだろう。
どんなに正論であっても途中で口を挟めば、お客様の怒りはヒートアップする。クレームはこじれ、悪化してしまうだろう。
これはやってはいけないことの一つでもある。
そんな時、手帳やノートにお客様が言った内容を書いていく。書くことに集中すれば、反論しなくなるもの。さらには“記録に残されている”という意識が働き、お客様は無茶を言いにくくなる。
よく電話で問い合わせすると「この会話は録音いたします」といったアナウンスが流れる。記録されていると無茶なことや変なことを言いにくくなる。
実際、これによってクレームは減少したという。
クレームの場合、お客様のところへは手帳かノートを持っていき、お客様の言うことをしっかりメモしてほしい。そうすることでクレームは最小限になるし、忘れて対応が遅れることなんてことには決してならない。うまく対応すれば逆に信頼関係を深めることもできる。
クレームを悪化させれば大問題になり、新規の営業活動などとてもできたものではない。速やかに対応し信頼関係を深めれば、そこからまた新たな仕事をいただけるかもしれない。これは大きな差になる。
時代も平成から令和に変わった。これから人口減の時代、お客様の数は確実に減っていく。メモをバカにする営業マンが生き残っていくのは非常に難しい。