総合転職すべきか…5年に1度はキャリアの棚卸しを
今月のテーマは転職です。バラ色老後をにらみ、転職が人生の選択肢を広げる可能性は大いにあります。キャリアアップに結びついた場合、生涯賃金を数千万円押し上げることも珍しくありません。
筆者は独立して自分のオフィスを構えていますが、30歳までは2つの会社に勤めました。転職や独立をしたことで、年収を早く高めることができたと考えています。しかし、どんなタイミングで転職を考えるべきかのマニュアルはありません。判断基準はどこに置くべきでしょうか。
■何年働いたら転職を考えるタイミングか
就職何年目に転職を考えるべきかは難しい問題です。新卒で会社に採用された20代にとって、転職は「2度目の就活」となるため、勇気が必要です。
城繁幸氏の「若者はなぜ3年で辞めるのか?」という書籍がベストセラーになりました。ここでいう3年とは、統計上よく使われる「3年離職率」が議論のきっかけです。厚生労働省の資料によると、大卒(2010年卒)の3年後離職率は31.0%です。10人に3人は3年後に会社を辞めていると考えるとかなり高い確率です。
しかし、ここでいう離職率は「仕事が合わない」のような転職も含むので、最適な「辞め時」を考える議論とはちょっと違うようです。
転職回数の多いことで知られる経済評論家の山崎元氏は「会社は2年で辞めていい」という著書を出しています。こちらはむしろ3年という区切りは意識せず、自分のキャリア形成を2年ごとのイメージで作ればよいとしています。28歳までに自分の「職」をみきわめたいので、動くなら早く転職してもいいのだ、という考え方です。
ここに筆者の意見を加えるなら、5~6年くらいが仕事を覚えて次のキャリアの礎としたり、限界を見極めたりするにはちょうどいいタイミングではないかと考えています。
意見はそれぞれであり、決まりはありません。20代の転職について「入社してから何年が辞めどき」と決めつける必要はありません。自分にとってタイムリーな時期を転職に選べばいいのです。
■恩返しがまだとか、会社の都合は気にしなくていい
転職経験のある年長者として若い方にアドバイスをひとつするなら、「会社に対して恩返ししていないのだから、まだ転職すべきではない」と考える必要はありません。
確かに、何の能力の裏打ちもないあなたを採用し、給与を払ってくれた会社には感謝すべきです。最初は研修費用なども負担してくれます。しかし、会社も覚悟の上やっていることですし、入社して何年も会社は安い賃金しか払ってくれません(能力が追いついても給料は低いままというケースもしばしばある)。「恩義」の感覚を持つ必要はないのです。
転職活動をしたとき、あなたの能力を他社が高く評価したのなら、逆に「今の会社はあなたを過小評価している」ということでもあります。ならば義理を感じる必要もないわけです。
もちろん、転職は簡単な話ばかりではありません。転職活動をするにあたって、「今ないスキル」を売り込むことはできず、獲得済みのスキルのみで評価してもらわなければなりません。新卒採用より転職活動のほうが厳しい世界です。
転職活動をするときは、今勤めている会社への恩義など忘れて、必死にチャレンジしてください(なお、会社を辞めずに在職中に転職活動をするのは問題ありません。転職のやりかたは次週以降説明します)。
会社に義理立てする必要がないと頭の整理がついたら、一度「転職の可能性」を考えましょう。やりがいのある仕事をこなしている時期なら、落ち着いてからでも構いませんし、不本意な仕事をしている時期ならすぐに考えても構いません。
5年働いたら一度は転職を考えてみるべきだと思います。毎年転職を考えていたら落ち着いてキャリアを伸ばす時間は取れません。しかし、40年くらいしか働く時間がないのに10年以上ムダに過ごすのはもったいないと思うからです。
すぐに転職を考えていない人も、5年に一度はキャリアの棚卸しをすると2つメリットがあります。
ひとつは「今の会社で働きながらキャリアを積み上げる可能性」を考慮するきっかけになります。自分の位置を相対化するきっかけにもなるでしょう。
もうひとつは「転職を視野に情報収集し行動に移す準備」になることです。何も考えていない人に比べれば、必要が生じたとき機動的に動けるようになります。あえて別の会社に移る行動を起こすのはとても面倒です。ですから定期的に自分にハッパをかけておくくらいがいいのです。
■辞めない、という選択肢は大いにあり
先ほど「今の会社で働きながら」という選択肢も含めて転職を検討しよう、という話をしました。転職の検討が必ず転職につながるわけではありません。
自分のキャリアを洗い直し、「今の会社でスキルの伸びしろがある」「楽しい仕事や職場環境で、環境を変える必然性が低い」「能力に見合う十分な報酬を得ている」場合は、あわてて辞めなくてもいいわけです。
検討した結果、キャリア継続のメリットが大きいなら、「転職しない」という判断はあるでしょう。野球のFAではありませんが、検討したうえで「残留」の決断になれば、すっきりと今の仕事に集中できるでしょう。
転職の情報提供会社は「転職しなくてもいいと思いますよ」とアドバイスすることはあまりありません(あなたの転職が商売の種なので、それを責めるのは筋違いです)。
転職を意識すると、今働いている会社との関係を客観的に捉えたり、自分の能力を客観視したりするきっかけになります。ぜひ自分で評価・判断してください。
2012年8月に連載を開始した「バラ色老後のデザイン術」は3年目に入りました。毎週たくさんの人に読んでいただきありがとうございます。「バラ色老後」のヒントを幅広い視点から提供していきますのでよろしくお願いします。