総合メンタルヘルスケアの基本と企業でのストレス対策
平成27年12月1日に労働安全衛生法が改正されて以来、従業員が50名を超える企業では、ストレスチェックが義務付けられています。ですが、なぜストレスチェックが必要なのか、なぜ法律で義務付けられたのかをお忘れではないでしょうか?そこで、労働安全衛生法の改正から約3年が経とうとしている今、改めてメンタルヘルスケアとはなにか、その基本と必要性を確認していきます。そして、ストレスチェックを活かした企業でのストレス対策も合わせてご紹介します。

メンタルヘルスケアとは
メンタルヘルスケアとは、精神の健康を維持し、向上させるための仕組みを作り、そして実践することです。つまり、企業におけるメンタルヘルスケアとは、なるべく少ないストレスで活き活きと仕事ができる状態を目指した取り組みとなります。ここでストレスという言葉を出しましたが、メンタルヘルスケアを理解する上では、このストレスへの理解が欠かせません。ですので、まず最初にストレスとは何かについて見ていきましょう。
ストレスとは
ストレスという言葉は、元々物理学の用語です。物体が外側から受けた圧力によって歪んだ状態を指す言葉でした。それが心理学でも使われ、外からの刺激によって精神や身体に負担がかかっている状態をストレスと呼ぶようになりました。また、ストレスを引き起こす刺激のことを「ストレッサ―」と呼び、ストレスによって引き起こされる症状や反応を「ストレス反応」と言います。では、このストレスは何によって生まれるのでしょうか。
ストレスを生む4つの要因
先ほど説明したように、ストレスを引き起こす原因のことを「ストレッサ―」と言いますが、ストレッサーは大きく4つに分類することができます。
1.環境的ストレッサ―
天候や騒音、悪臭などのストレスを生む環境を指します。
2.身体的ストレッサー
病気やけが、睡眠不足などのストレスを生む身体の状態を指します。
3.心理的ストレッサー
不安や悩み、恐怖、緊張などのストレスを生む心理状態を指します。
4.社会的ストレッサー
上司や同僚、家族、友達との人間関係や仕事の忙しさなど、社会性が生むストレスの原因を指します。
以上の4つに分類できるストレッサーですが、その大きな特徴として「連鎖性」というものがあります。例えば、夜中に近所から大きな騒音がしているとき、これは環境的ストレッサーとしてストレスを生みますが、この騒音によって睡眠不足になった場合、騒音という環境的ストレッサーは、ストレスの原因であるだけでなく、睡眠不足という身体的ストレッサーの原因ともなります。このように、ストレッサーはストレスを生むと同時に、他のストレッサーを生む場合があり、筆者はこれを「ストレッサーの連鎖性」と呼んでいます。ストレスはこの連鎖性によって次々と生み出され、蓄積していきます。
ストレスが生む症状
では、こうして蓄積していったストレスはどんな症状を引き起こすのでしょうか?メンタルヘルスケアは、精神の健康を維持、向上するための取り組みであり、ストレスが少ないほど健康だとお伝えしました。では、強いストレスがある状態、ストレス疾患になった状態は、なぜよくないのでしょうか。そこで、ストレスがどのような症状を引き起こすのかについてご説明します。
~ストレスが生む症状~
・睡眠障害
・首と肩のこり
・疲労感
・頭痛
・意欲と興味の減少
・生産性の低下
・不安や心配の増大
ストレスによる症状は、精神だけでなく、身体や能力にも大きな影響を与えます。そしてそれ自体が新たなストレスの原因にもなります。このようにストレッサーやストレスによる症状は、次のストレッサーを生み出し、負の連鎖を起こします。従業員の中には、負の連鎖が起き始めたばかりの人もいれば、負の連鎖にどっぷりはまっている人もいます。メンタルヘルスでは、この負の連鎖へのはまり具合を3段階に分けており、それぞれ「健康」「半健康」「ストレス状態」と呼びます。
メンタルヘルスにおけるストレスの3段階
先ほども述べたように、精神の健康状態は、その人がどのくらいストレスを持っているかによって決まります。そしてメンタルヘルスでは、健康状態をストレスの観点から「健康」「半健康」「ストレス状態」の3段階に分けています。
健康
「健康」とは、ストレスが少なく、精神的に健康な状態を表します。「多少のストレスはあるけれど、気にするほどではない」というような状態がこれに当たります。
半健康
「半健康」とは、強いストレスを感じている状態です。今は仕事を休むほどではなくとも、半健康状態が続くと、次の「ストレス状態」になりやすいので注意が必要です。
ストレス状態
「ストレス状態」とは、すでにストレス疾患を患っている、もしくは精神障害が見られる状態を表します。この段階になる、専門家による治療が必要になるので、長期休暇を取る必要が出てきます。
このように、精神の健康はストレスの度合いによって「健康」「半健康」「ストレス状態」の3段階に分けられます。そして、メンタルヘルスケアでは、それぞれの段階にあった適切なケアをしていくことが重要となります。ですので、それぞれの従業員が今どの段階にいるかをしっかりと把握することが大切です。その点で、ストレスチェックを行うことには大きな価値があり、だからこそ義務化がされたのです。
全ての段階で共通の対策:職場環境の改善
では、ストレス段階がわかった従業員にどのような対応、対策をとったらいいのか、具体的な施策を見ていきましょう。メンタルヘルスケアにおいて、最も重要なのがこの「職場環境の改善」です。ストレスが原因で鬱になり、一度休職した人が、復職を果たした後にまた鬱になって休職するというケースはよくあります。これには、その従業員が鬱になりやすいという点も関係していますが、それ以上に職場ストレスを生みやすい職場環境である点が関係しています。つまり、職場環境が整備されない限り、メンタルヘルスが改善されることはありません。予防は最大の治療だとよく聞きますが、メンタルヘルスにおいては職場環境の改善がメンタルヘルスへの予防であり、対策にもなります。
職場環境を改善するためには、先ほど紹介した4種類のストレッサーについて問題点はないか検討する必要があります。今回は4種類のストレッサーのうち、職場での心理的ストレッサーを取り除く取り組みをご紹介します。「心理的安全性」というのは、従業員が不安や心配を感じることなく発言や提案をできる雰囲気のことを言います。この「心理的安全性」を職場に作ることで、心理的ストレッサーを取り除くことができます。
参照リンク:「心理的安全性とは?Googleが注目した成功するチームの共通点心」
第2の段階「半健康」への対策:セルフケア
セルフケアとは
「半健康」の状態にある人に対するケアの一つとして「セルフケア」があります。セルフケアとは、従業員一人一人が自身の精神の健康を守る手法です。
~セルフケア方法~
・腹式呼吸やヨガなどのリラクゼーション
・ストレッチ
・適度な運動
・快適な睡眠
・友人や家族との交流
・趣味に興じる
・笑う
ストレスの感じ方が人それぞれ違うように、有効なストレスの発散方法も人それぞれです。ですので、社員向けのセミナーで「質の高い睡眠のとり方」について紹介したり、スポーツや趣味を推奨するために社内サークル制度を作るなど、従業員が自分に合ったストレスへの対処法を選べる仕組みを作ることが重要です。
第3段階「ストレス状態」への対策:ラインケア
ラインケアとは
ラインケアとは、課長や部長などの管理監督者が部下のメンタルヘルスをケアすることです。このラインのケアにおいて重要な点は3つあります。では、一つ一つ見ていきましょう。
ラインケアをするときの3つのポイント
部下の不調に気づく
ストレス疾患や精神障害は、自覚しづらいという特徴があります。「なんとなく体調が優れない」「なぜかすぐに寝付けない」といった症状があったとしても、それがストレスから来るものだとは気付かないケースが多くあります。ですから、管理監督者から見て、部下の様子がおかしいと感じた時には、カウンセリングを勧めるなどの対応が必要です。
~これに気付いたら注意が必要!ストレス疾患者に見られる特徴~
・遅刻や無断欠勤が増える
・報連相が減る
・業務効率が著しく下がる
・今までしなかったようなミスが増える
・挙動不審
・服装が乱れている
・表情や行動に活気がなくなる
相談を受けたときの対応
管理監督者には、部下からの相談を受ける役割があります。ですから、部下から相談を持ちかけられた場合には、適切に応じましょう。相談を持ちかけられたときに大切なのは、すぐに答えを出さずに傾聴することです。部下がどんな気持ちなのかを考えながら、共感のスタンスで一通り話を聞き切りましょう。そのあとで、部下から意見を聞かれた場合には、適切にアドバイスをしてください。
個人情報への配慮
不調に気付く上でも、相談を受ける上でも、部下との信頼関係は重要となります。病気のことや相談事はプライバシーに深くかかわることなので、個人情報の保護と部下の意思を尊重する必要があります。部下との話し合いで得た情報を漏らさないよう、くれぐれも気を付けましょう。
まとめ
ストレスの感じ方は、人によって違い、ストレスへの耐性も人によって違います。従業員それぞれのストレス段階に合わせたメンタルヘルスケアを行うためにも、ストレスチェックを通して、従業員が今どの段階にいるのか見極めることが大切です。もし、ストレスチェックは実施しているが、メンタルヘルスケアはこれから導入するという場合には、ぜひこの記事を参考にしてみてください。