総合「副業」が企業にもたらすメリット・デメリットとは
なぜ「副業」が必要か
日本で進む、働き方改革。政府が進めようとしていた、働き方改革関連8法案は、いろいろな不手際によりまったく先が見えない。しかし、政府が何をしようと、法律がどう変わろうと、厳然たる事実は、日本の生産性が先進国の中で低いということである。
保護主義的な動きはありつつも、グローバル化がますます進展している現在、競争相手が日本のみならず、さらに異業種という場合もある。政府が動くのを待つのではなく、自社のあるべき姿を描き、それに向かって、働き方を変えていかなければならない。
ここに来て「働き方改革は第二章に突入」と言われており、そのテーマは「生産性」の向上だ。この「生産性向上」については、立正大学の吉川教授の表現が分かりやすい。
「1時間あたりに作れるまんじゅうの数を増やすのが技術的な意味での生産性上昇。世の中の変化に合わせて売れるまんじゅうを新たに作り出すという生産性の上昇もある」
前者が効率化の向上、後者が創造性の向上、つまりはイノベーションの創出である。
日本経済新聞社が主催し、企業戦略や経営哲学、経営の最新トレンドについて経営者自ら議論する国際会議「世界経営者会議」でもほとんどの経営者がイノベーションの必要性を話していた。働き方改革のテーマ、生産性の向上は、このイノベーションの創出が最大の目的と言ってもいいだろう。
一方、働き方改革は「多様性」が広く議論されるようにもなっている。多様な働き方、時間や場所にとらわれない働き方。あるいは、なんでもありの無限定社員だけでなく、地域限定、時間限定、職務限定の限定正社員。結果、多様な従業員が働くことになる。
イノベーションとは多様性からとも言われ、多様なナレッジ、スキル、経験の組み合わせによりイノベーションが生まれる。とすれば、多様な働き方により、先に必要とされるイノベーションの可能性も高まることになる。多様な働き方ができることにより、優秀な社員も引き止めることもでき、また新たに採用できる。
この多様な働き方の中に入ってくる、これまでの日本企業であまり議論されてこなかった新たなものが「副業」だ。副業についての詳細は後程記するとして、よく言われることは、副業をすることにより、その従業員の「自律性」が高まるということだ。起業などすれば、「修羅場」を経験することになり、スキルの向上とともに、自律性が育まれる。
また副業とは、外との接点が当然のこと増えるので、社外のナレッジ、スキル、経験を社内に持ち込むことができる。世に言われるオープン・イノベーションである。この自律性が高まることにより、結果、社内のイノベーションの可能性を高めることに結び付く。
つまり、働き方改革は生産性の向上により、イノベーションの創出をめざし、そのためには、働き方や従業員の多様性を確保することが必要であり、その多様性を確保することにより、自律性が高まり、結果、イノベーションの可能性が高まるのである。働き方改革においては、この3要素、「生産性」、「多様性」、「自律性」を意識するべきだろう。
副業のメリットとデメリット
では、副業、兼業のメリット、デメリットを、企業側の観点と労働者側の観点に分けて整理してみる。
●企業側のメリット
(1)副業、兼業をすることで、従業員が社内では得られない知識やスキル、人脈を獲得し、それを本業に活かし、事業の貢献に繋がる。
(2)副業、兼業することで、従業員の自律性、自主性を促すことができる。
(3)副業、兼業ができることにより、優秀な従業員獲得ができ、一方で、優秀な従業員の退職を防ぐことができる。
●企業側のデメリット
(1)副業、兼業する従業員の労働時間管理、健康管理、情報漏えいや企業秘密の保持、そして、競業避止をどのように確保するかが課題となる。
●労働者側のメリット
(1)本業を持ったまま別の仕事に就くことができ、今後の起業、独立のための助走期間とすることができる。
(2)本業をしながら、自らやりたい仕事に挑戦することができる。
(3)副業、兼業を通じて、新たなスキルや知識、人脈を獲得することができる。
(4)副業、兼業により所得の増加が見込める。
●労働者側のデメリット
(1)副業、兼業を行うことにより、労働時間が長くなる可能性があり、自ら労働時間管理や健康管理をする必要がある。
(2)本業における職務専念義務、秘密保持義務、競業避止義務の意思が必要となる。
(3)1週間の所定労働時間が短い仕事を複数持つ場合、雇用保険等の適用がない場合が生ずる。
実際の運用については、厚生労働省のガイドラインを参考にしつつ、また、『月刊総務』4月号でも、厚生労働省、経済産業省の担当官の取材を通して国の動きをレポートしている。また専業禁止を謳っているエンファクトリー、昨年から申請により副業を許可しているソフトバンクの企業事例も紹介しているので、ぜひ参考にしてほしい。
総務と副業
では、総務部員が副業をしたらどうなるのだろうか。副業にもいくつかのパターンがある。本業でのスキルをそのまま他社で活用するパターン。全く違う畑で、本業とは異なるスキルや知識を活用するパターン。中身はともかく、起業するパターン等々。
本業でのスキルを活用するパターンとして、他社の総務の仕事をしてみるというのはどうだろうか。副業ではなくとも、2社で交換留学するような感じで、他社の総務を経験してみる。多くの気づきと、他社に対しての改善提案ができるのではないだろうか。
総務で避けたいことは、思考停止であり、前例の踏襲だ。常にゼロベースで見直すことが重要で、その見直す視点を得るためにも、異なる世界の総務を経験することも大切だ。
本業と異なる畑での副業も、多様な視点を得ることに繋がる。『月刊総務』の取材を通じて感じていることは、総務部門の大改革をしているところは、案外、総務経験のないメンバーが異動してきてから、ということが多いように思う。第三者の異なる視点が入らないと、なかなか総務部門は改革が進まない。知りすぎるが故に手が付けられない、ということも多い。異なる畑で身に付けた視点は大きな武器となるはず。
さらに、起業を経験できれば、経営総務と言っているところの、経営視点でもって総務部門を見ることができる。経営者に期待される総務とは、会社になくてはならない総務とは何かが理解できるかもしれない。
これから多くの企業が副業を容認していくことになるだろう。経営に対しては、副業とはいわないまでも、総務部員には外との接点を持つことを、ぜひ勧めて欲しい。総務ほど外との刺激が必要なのである。今まで記したように、外からの目線が総務改革には必要なのだから。
よく、総務は社内にいないといけない、という誤解の下、なかなか外に出られない。結果、内向き思考となり、大きな改革ができないままでいる。総務は人件費に次ぐ大きな予算を抱えている。また、働く場という、従業員に大きなインパクトを与えるプラットフォーマーでもある。
この総務が本来の役割を十二分に果たせれば、大きく働き方を変えることができる。いまこそ、総務の可能性、潜在力を認め、その活躍に大いに期待してほしいものである。