企業の「人材三重苦」を解決するカギは? 「採れない、育たない、すぐ辞める」の悪循環を断つために

総合企業の「人材三重苦」を解決するカギは? 「採れない、育たない、すぐ辞める」の悪循環を断つために

人手不足にあえぐ企業への処方せんは、今いる人材の下位8割を「底上げ」することだ、と行動科学マネジメントの第一人者が説く。その根拠はどこにあるのだろうか?

7割を超える企業が人手不足を感じている

私が講演や研修などに行く会社で、近年必ず聞く経営者や経営幹部の嘆きがあります。

「“いい人”が採れないんです」

「教えたことが全然身についてない、ザルで水を汲んでるみたいですよ」

「せっかく採用した新卒社員が、ちょっと叱るとすぐ辞めてしまうのです」

採れない、育たない、すぐ辞める──企業は、まさに「人材三重苦」に陥っているのです。

独立行政法人中小企業基盤整備機構が中小企業を対象に行ったアンケート(2017年)によると、業界を問わずに7割を超える企業が「人手不足を感じている」と答えています。

その人手不足の影響がどういうところに出ているかというと、他を大きく引き離して「人材の採用が困難」がトップ。自社の商品やサービス自体はウケているのに、顧客の需要に応えられるだけの人材が確保できず、ビジネスがうまく回らなくなっている企業も見受けられます。

こうした危機は中小企業だけのものではありません。有名大手企業であっても正社員の確保に苦慮しています。

さらに、そもそも人が足りない時代に、やっと採用できた人材が思うように育ってくれないとか、手塩にかけて育てたつもりがすぐに辞めてしまうということが、あちこちで起きています。

このような状況にあって、企業の経営陣や人材育成の担当者、部下を持つマネジャーなどがすべきことは何なのか。少なくとも、「いい人材を確保できない」と嘆くことではないはずです。

「優秀な人材が欲しい」と望んでいるばかりでは、事態は一向に改善されません。一刻も早く、すでにいる人材の活用に着手すべきです。その人たちこそ、これからのあなたの会社を支える財産なのですから。

人材の「2:6:2の法則」

ビジネスの現場における従業員の能力について、古くから「2:6:2の法則」が言われています。どのような企業も、2割の「できる人」(ハイパフォーマー)、6割の「普通の人」、2割の仕事が「できない人」によって構成されているというものです。

そして、多くの企業では、2割のハイパフォーマーが全体の売り上げの8割を稼いでいると言われています。となれば、人材不足を嘆く人たちは、何としてもハイパフォーマーを採用したいと思うでしょう。

しかし、その発想を根本からひっくり返さない限り、悩みは解決しません。

その理由は大きく2つあります。

1つは、「2:6:2」という構成は興味深いことに、何か特別な力学でも働いているのか、どのようにシャッフルしても変わりません。仕事ができない2割を排除すると、これまで普通の人に属していた6割から、新たに2割のできない人が出現してしまうのです。

「すべての人員をハイパフォーマーで構成したい」という単純な願いは、いかなる有名企業でもかなわないということです。これは、プロ野球の巨人軍が有名選手を集めたからといって優勝できるわけではないことからも明らかでしょう。

だから、この「2:6:2」の構成をいじる、つまり「優秀な人ばかりを欲しがる」のは無駄。それよりも、全体の底上げを図ることを考えたほうがはるかに効率的です。

もう1つが、ハイパフォーマーの争奪戦はあまりにも競争の激しい世界だということです。

考えてもみてください。人材は、どうにもこうにも不足しています。どこの企業も血眼になって「できる人」を探しています。そうした状況で何とかハイパフォーマーを確保したところで、あなたの会社は安泰でしょうか。

優秀なハイパフォーマーほど、あなたの期待に反して独立したり、他社からヘッドハンティングされたりして出て行く可能性が高いのです。

実際に、公益財団法人日本生産性本部が毎年行っている「新入社員・秋の意識調査」では、「条件が良い会社があれば、さっさと移る方が得だ」と考える人が2016年には過去最高の54.6パーセントとなっています。

そんな若者の動向に一喜一憂しながら日々を送るより、今いる人たちに着目し、彼らにしっかり売り上げの作れる人になってもらいましょう。


「そんなことができるなら最初から苦労はしない」と反論されるかもしれません。しかし、「そんなことができるかどうか」について、真剣に取り組んできた経営者やマネジャーは実はほとんどいません。

おそらく、今日のような人材不足に悩んだことがなかったために、上位2割のハイパフォーマー以外の人とは本気で向き合ってこなかったのです。

これからは、6割の普通の人や2割のできない人を活用していかなくては、ビジネスは成り立ちません。彼らを戦力にできた企業だけが生き残ることになるでしょう。

『短期間で社員が育つ「行動の教科書」』
著者からのメッセージ

残業をしたがらない若者が増え、労働人口自体も減り続けています。

政府は「働き方改革」を推し進めていますが、その理由は労働者の保護ばかりではなく、日本企業に対し「従業員に世界基準の働き方をさせろ」と迫っているわけです。

それはなぜかと言ったら、つまるところ税収の確保です。

これから日本の人口は激減し、マーケットは縮小していくばかり。企業が世界にマーケットを求めていかなければ、日本経済自体が衰退に向かうことは明らかです。

しかし、従業員に今のような働き方をさせている限り、日本企業のグローバル化はかないません。文句を言わずに残業するような労働者は、海外にはいません。

また、日本においても従業員の確保が難しくなり、外国人の雇用は避けられません。 そうしたなか、人に仕事をつけていることが、企業の大きなネックになっています。 仕事を標準化して、仕事に人をつけておけば、どこの国の人であろうと、その仕事をこなすことができます。その結果、従業員一人ひとりの負担が減り、残業などする必要がなくなります。

本書の方法で、行動の教科書を正しくつくれば、仕事と人が分離します。つまり、だれがやってもその仕事で収益が出せるようになります。

最初は多少の労力が必要だとしても、一度つくってしまうと、あなたは驚くほどラクになります。ぜひ、ご一読ください!