総合若者が信頼するのは「ボス充」な上司。多様な部下をマネジメントする秘訣とは
2018年1月29日、株式会社リクルートホールディングス iction!事務局は、セミナー「一歩先のダイバーシティへ。マネジメント層に求められることとは」を開催した。今回は、現代の若者に信頼される理想の上司像と、多様な人材をマネジメントする秘訣をレポートする。社員のメンタルケアや定着率向上など、マネジメントに悩む人事必見だ。
今人気なのは「ボス充」な上司
今の若者が支持するのは「ボス充」な上司だという。ボス充とは、上司の生活・社外活動が充実している状況のことだ。
株式会社リクルートマネジメントソリューションズが20代の一般社員にアンケート調査した結果、「仕事人間」「会社人間」の上司よりも、社外活動が充実している方が人間的な魅力を感じると回答した割合が40.2%と半数近くを占めた。この「社外活動」には、育児や趣味、勉強、副業などが含まれる。
さらに、人間的な幅が広く、早く帰る人が理想の上司像として高く支持されている。いずれも管理職自身が考える上司像よりも高い割合を占めていて、理想の上司像が移り変わっていることがわかる。さらに、「上司の社外活動での学びを、職場でも共有してほしい」と回答した割合は61.9%。若い部下は女子の社外活動の話を聞きたいと思っているのだ。
若者の約8割「今の50~60代とは働き方に関する考え方が違う」
株式会社リクルートマネジメントソリューションズ組織行動研究所所長・古野庸一氏は「20~34歳の若者の78.8%が『今の50~60代とは労働時間や働き方に関する考え方が違う』と回答しています。特に『仕事の比重が重すぎる』『自己実現の場は仕事以外にもある』『仕事ばかりで家族を大事にできない人は部下を大事にできないのでは』といった考えが50~60代と異なっていて、社外での学びも重要視されていることがわかります。この傾向は日本だけでなく、世界的に強まっているものです」と述べる。
現在、労働時間の上限規制が強化され、残業削減実施率は85.7%に到達した。ようやく働き方改革が第2フェーズに入り、ただ労働時間を短縮するだけではなく、余剰時間の使い方に着目するようになったのだ。社外活動の経験は仕事で活かすことができ、仕事の経験は社外活動で活かせる。この相乗効果を発揮している上司こそ、これからの時代に部下から信頼される上司だと言える。
マネジメント層もストレス過多に陥っている
多くの人がマネジメント経験を持つものの、マネジメント層に「マネジメントにストレスを感じるか」と質問したところ、「ストレスがある」との回答が多く、特に部下のメンタルケアに対して負担を感じているケースが多くみられた。
リクルートワークス研究所所長・大久保幸夫氏は「以前のマネジメントは今よりも単純で、従来のマネジメント法を継承すれば問題なく、特別なスキルは求められませんでした。これは極めて同一性の高い新卒社員を採用してきたためだと考えられます。ただ、今は社員にも多様性が生まれ、従来のマネジメント法では対応できなくなってきました」と述べた。
課題を感じながら、上司に相談できずにいる女性社員
株式会社リクルートホールディングスサステナビリティ推進室室長・伊藤綾氏も、「管理職も悩んでいる」と強調した。リクルートでは特に女性従業員が30歳前後になると、今後のライフプランを考えてキャリア志向や成長意欲にブレーキをかける傾向がみられた。そこで、28歳前後の女性社員とその上司に対してキャリア支援などの取り組みに参加できる招待状を送付。その結果、キャリアとプライベートの両立に課題を感じている女性が8割を超え、さらにその半数が上司に相談していないことがわかった。
「相談できないのは『相談してもわかってもらえないのでは』『結婚するかまだわからないので遠慮してしまう』『相談したら評価が下がるのでは』といった懸念があるから、などの声が集まりました。その一方で、上司も『どうやって部下のキャリア形成を支援し、動機付けしていけばいいかわからない』『女性活躍推進の重要性はわかるが、やり方やコミュニケーション方法がわからない』と悩んでいます。女性自身は『自分の力不足ではないか』と考え、マネジメント層は『マネジメントがきちんとできていないのでは』と考えていました」と伊藤綾氏。
マネジメント層の多くが「ジョブ・アサインメント」に悩む
マネジメントの課題を調査すると、「職務の設計・割り当てが難しい」「業務上の指示が難しい」など、仕事をそれぞれのメンバーに割り当て推進するマネジメント業務「ジョブ・アサインメント」に課題を感じているケースが多い。
大久保氏は「ジョブ・アサインメントの難しさは、個人の能力に合わせて仕事のタスクを見直さなければいけない点にあります。部下の得意な業務と苦手な業務を知り、適材適所を実現することが重要なのです」と解説した。
多様な人材を活かす「インクルージョン・マネジメント」
長く働くためには周囲の協力や支援が必要不可欠になる。マネジメントにおいて重要なことは、強い人材と弱い人材がいるのではなく、すべての人材が「強い部分」と「弱い部分」を持っていると知ることだ。多様な人材の強みを評価し、弱みをケアするマネジメントを“インクルージョン・マネジメント”と呼ぶ。インクルージョン・マネジメントを行うには、現場のマネジャーが幅広い知識を持ち、コミュニケーションのポイントをおさえる必要がある。
「たとえば女性社員が妊娠した時、最初に報告を受けるのは人事ではなく直属の上司です。最初の相談相手になる上司に育児の基礎知識がなければ、産休後の職場復帰プランを立てにくくなります。本人のキャリアを考えながらどうジョブ・アサインメントをするか。ダイバーシティ組織を実現するためには、こうした多様な知識をマネジメント層に与える必要があるのです」と大久保氏。
その際に弊害になるのが、マネジメント層の過重負荷とスキル不足だ。業務量は数年前に比べて増加し、かつ人材不足も深刻化している。その結果として長時間労働が発生し、部下の育成やケアに割く時間も確保できなくなり、マネジメントスキルを学ぶ時間も確保できない。マネジメント層自身がストレス過多に陥っているのだ。
多様な部下をマネジメントする秘訣とは
大久保氏は「それではどうやってマネジメントを強化するかというと、組織全体でマネジメントに取り組んでマネジメント層の負担を軽減しながら、産業医のサポートを受けるのがおすすめです。産業医とは、企業等において労働者の健康管理等を行う医師のことで、日本では一定規模以上の事業場には産業医の選任が義務付けられています。人事と産業医が話し合って解決策を見い出していくと、より体系的なマネジメントルールが組み立てられるでしょう」と提言した。
「また、リクルートではマネジャー同士でマネジメントの悩みを吐き出し、共有する場も設けています。そして “ある女性メンバーに重要なプロジェクトリーダーを任せる面談”のロールプレイングを実施。不安を感じる女性に対してどんな言葉をかけるか実践するなど、より実用的なマネジメント知識の習得に寄与しています」と伊藤綾氏。
成長し続けるダイバーシティ組織の形成を目指すには、マネジャーだけに社員のマネジメントを押し付けるのではなく、組織全体でマネジメントし、課題解決する仕組みを作るべきだろう。






