増える「企業内会計士」 監査法人から年500人転職

総合増える「企業内会計士」 監査法人から年500人転職

公認会計士の資格を持ちながら監査法人ではなく上場企業などで働く「企業内会計士」が増えている。この5年間で3倍に増えた。企業の会計不祥事などを受けて監査法人への視線が厳しくなる中、幅広いキャリアを求めて勤務歴が10年未満の若手が転職するケースが目立っている。こうした会計人材の流動化が、市場の規律強化につながるとの指摘もある。

公認会計士の原恭平さん(32)は2014年、これまで5年間勤めた監査法人トーマツからファーストリテイリングに転職した。現在は経営企画部門に籍を置き、国内「ユニクロ」の販促や経費管理の立案に取り組む。「監査業務で培った全体を見渡す力が生かされている」と話す。

ファストリは会計士の採用を強化している。ここ5年で4倍の約20人まで増やした。「海外法人の最高財務責任者(CFO)などの人材として活躍を期待している」(同社)という。

企業内会計士はリーマン・ショック後に監査法人が採用を絞り始めたのを機に増えた。日本公認会計士協会の増田明彦常務理事は約3万人の会計士のうち1割強が監査法人以外で勤務していると指摘。「年間で約500人が監査法人から転職しているようだ」と話す。

実際、同協会で組織する監査法人・税理士法人以外で働く会計士が加入する「組織内会計士ネットワーク」の登録者数は17年に1612人と12年比で3倍となった。

転職する理由は様々だが、繁忙期の長時間労働が敬遠されるほか、以前とは異なり全員が厚待遇のパートナー(幹部)になれないことも、若手の転職に拍車をかけているようだ。「優秀な同期ほど転職していった」(中堅の会計士)

活躍の場は上場企業だけではない。公認会計士専門の転職仲介PCP(東京・渋谷)の桑本慎一郎代表は「新規株式公開(IPO)を目指すベンチャー企業では会計人材は引く手あまた。好待遇で迎えられる」と話す。

通信ベンチャーのJTOWER(東京・港)の稲野辺英輝経営企画担当マネジャー(26)は、3年勤めた新日本監査法人からコンサル会社を経て転職。「第三者的な立場ではなく、自分自身で事業を動かしたかった」と転職した理由を語る。

「築地銀だこ」を運営するホットランドのIPOを14年にCFOとして実現させた土谷祐三郎さん(38)もトーマツ出身だ。現在は再び非公開会社のCFOを務める。

会計制度に詳しい野村証券の野村嘉浩氏は「会計に精通した人材が企業側で決算作成や内部統制に携わることは社会全体にも望ましい」と話す。

もちろん、深刻な人手不足に悩む監査法人側も手をこまぬいているわけではない。あずさ監査法人は2~3月に毎週、会計士の中途採用イベントを実施する。トーマツでは退職者の交流組織を新設。新たな採用機会を探る狙いだ。

外部でもまれた会計士が再び監査法人で活躍するようになれば、「村」と皮肉られる会計士業界が変わるきっかけになるかもしれない。