総合“社風”に合った人を採用できる「ミツカリ」が目指す世界
「せっかく採用してたのに、すぐに辞めてしまう」――。こうした課題に悩んでいる経営者、人事担当者は少ないくない。今年、厚生労働省が実施した調査でも新卒社員の31.9%が3年以内で退職したという結果が出ている。
離職の理由は、業務内容や福利厚生など人それぞれだが、昔から各種調査で明らかになっているように「社風が合わないから」「上司と合わないから」という“価値観のズレ”を理由に挙げる人がやはり多い。
しかし、応募者が自社と「合う」のか「合わない」のかについては、面接官が属人的に判断するしかなく、また、どこに配属されるのかにもよって変わってくる。結局、実際に“中”に入るまでは分からないものである。
そうした中、AI(人工知能)が応募者の価値観やタイプを分析し、自社の社風とのマッチング度を可視化させるサービスが登場した。それが、ベンチャー企業ミライセルフが提供する「mitsucari適性検査(ミツカリ)」だ。
1年半前にリリースしたばかりだが、既に700社が導入するなど急成長している。ミツカリは採用のカタチをどのように変えていくのだろうか――。同社の表孝憲社長に話を聞いた。
活躍するためには「スキル」よりも……
――「ミツカリ」を開発した背景を教えていただけますか?
表: 私は前職(モルガン・スタンレーMUFG証券)で、面接業務を担当する機会が多かったのですが、そのときに痛感したのが採用のミスマッチは企業側だけでなく、入社した人にも悲惨な思いをさせてしまうということです。最悪の場合、本人が病気になってしまうこともあります。
どうすればミスマッチをなくせるのか。そう考えていたとき、ある疑問が浮かびました。
仕事を探すとき、仕事内容だけでなく「この人がいるから」「こんな社風だから」という動機で仕事を選ぶケースも多いのになぜ「人」や「社風」で応募者と企業をマッチングさせるサービスが世の中にないのだろう、と。
上司やチームメンバーとの相性は仕事のパフォーマンスにも大きく関係するので、重要な問題です。逆に言えば、どんな人でも、“自分と合う組織”に入れれば、絶対に活躍できると私は思っています。
そして、その「合う」「合わない」は、スキルうんぬんの話ではありません。なぜなら、同じ業務でも、ある組織では活躍できたのに、違う組織では全く活躍できないという人が現実にいるからです。頭がキレて優秀な人でも、環境によっては成果が出せなくなるというケースを私自身がよく見てきました。
しかし、こうした課題に本気で向き合う企業は少ないのが現状です。理由は社風や価値観というものが、非常にふわっとしていて「見える化」できなかったからです。
近年は、AIを活用したデータ分析などによって、そうしたものも見える化ができる時代になりました。今ならこの課題を解決できる――そう考え、2016年2月に応募者と企業の“マッチ度”が可視化できるサービス「ミツカリ」を立ち上げました。
――ミツカリはどのような仕組みでマッチ度を判定しているのでしょうか。
表: ミツカリでは、応募者と企業側(部署単位)の“双方”が、10分程度で終わる適性検査(性格診断)を受けます。この適性テストを解いていただくことで、AIが「タイプ」を分析し、応募者がどの部署・部門と相性が良いのかを提示してくれます。
これまでは、応募者のタイプが分かっていても、それが自社と合っているのかどうかについては不透明でした。ミツカリでは自社の内部も見える化することで、どんなタイプの応募者なら、どの部署の上司と価値観が合うのかを分析し、マッチ度の高い職場を割り出してくれます。
「うちの社風はこうです」といっても、結局は本人が直接関わる上司や先輩との相性が良くなければ、意味がありません。また、従来の適性検査では「このタイプは営業向き!」といった結果までは出てきますが、同じ営業でも職場によって価値観が大きく異なります。
ミツカリでは「職場」「人」単位で切り分けてマッチ度を分析できるので、配属先でのミスマッチを防ぐことができるのです。これが、サービスの大きな特徴です。もちろん、ライフイベントなどによって社員の価値観が変化する可能性もありますが、1~2年にくらいの頻度で再受験することで対応できます。
また、採用後も「退職した人」「評価されている人」といったように、結果のデータも蓄積していけるので、分析の精度も使えば使うほど、高めていけます。
リリースしたのは約1年半前ですが多くの企業から引き合いがあり、既に導入企業は700社、登録者は3万人を超えています。
定着率を高めることが企業の喫緊の課題
――なぜ「社風」でのマッチングにニーズがあるのでしょうか。
表: 「定着率を高めたいから」という声が一番多いですね。採用しても辞められてしまうと意味がありません。採用がゴールではなく、続けて働いてもらうことが必要です。そのためにも、自社に合った人を採用したいと考えているわけですが、面接でそれを見極めることは難しいことです。どうしても属人的な判断になってしまうので。
だからこそ、ミツカリのようなテクノロジーを活用して科学的に運用していこうというニーズが高まってきています。ツールを活用することによって「人を選ぶ(判断)」という業務は自動化でき、人事は「口説く(入社の動機付け)」ことや集客に時間を使えるようになります。
また、ミツカリでは「Aさんはプロセス重視タイプです。営業部には結果重視の人が多いので29%のマッチ度しかありません。しかし、〇〇部署だと、マッチ度が高くなります。面接では〇〇部署に関心があるのか聞いてみましょう」といった具合に、面接で聞いておくべきポイントもアドバイスしてくれるので、面接もスムーズにこなせるようになります。実際、面接時間を1人当たり20分以上、短縮できたという事例も多くあります。
これから先、労働力をいかに確保するかが問われる「採用難社会」では、こうした効率化が非常に重要です。効率化した分、企業はより多くの人を面接できるようになりますので。
「活躍できるかどうかは環境次第」
――ミツカリは、社内の人材配置の最適化にも生かせそうですね。
表: そう通りです。応募者だけでなく自社の社員のタイプも見える化できるので、人材配置にも役立てることができます。実際、新人の配属先を決める際にミツカリを活用する企業も増えています。また、メンター役は誰が適任なのかというこもミツカリが導き出してくれます。
さらに、中間管理職に対しては、「あなたの部下はこういうタイプだから、こういう接し方をするといいですよ」と、アドバイスをすることもできます。
――今後、HRテックの普及によって人事の役割はどう変わっていくと考えていますか?
表: 先ほども申し上げたように、「人を選ぶ」という部分はテクノロジーによってどんどん自動化されていきます。しかし「この企業に入りたい」と思ってもらえるような、「人を引きつける」仕事は人間にしかできません。人事は今まで以上に、自社のブランディングや集客に時間を使えるようになっていくと思います。
また、「そもそも自社にはどんな人材が必要なのか」という議論に多く時間を多く割けるようになるでしょう。この「そもそも論」は一番重要ですし、機械には判断できませんので。
――目標設定について教えてください。
1~2年以内に1万社以上の導入を目指します。全ての人が適材適所で働き、活躍できる――そんな世界を実現するサービスにしたいですね。

部署・部門ごとに「マッチ度」を可視化する
