総合シニア・主婦の出番! 人材確保へのマック、ファミマの工夫とは?
空前の人手不足だ。8月の有効求人倍率は1.52倍で、1974年以来43年ぶりの高水準。主婦や元気なシニアが新たな働き手となるよう、企業は人材獲得に知恵をしぼる。短時間で気軽に、自分の生活スタイルに合うように。新しい働き方が可能になってきた。
人材確保に向けた企業の取り組み例(週刊朝日 2017年10月13日号より)
焼き鳥屋で、人手不足がネックになっている作業がある。串を刺す仕込みだ。
神奈川県秦野市の「居酒やきとり 呑喜(のんき)」は、200~300本ほどの串刺しを、かつて従業員3人で5時間がかりでやっていた。店長の犬飼青空(はる)さんは「(仕込みが追いつかず)メニューに載せていても、用意できていない品があった」と話す。
仕込みの人ぐりがつかないため、6月に導入したのが自動串刺し機。切った鶏肉を機械の長方形状のトレーに置いてボタンを押すと、串が刺される。15秒ほどで5本分が完成する。
導入後、1人で2時間作業すれば仕込みを終えられるようになった。犬飼店長は「今はほとんどの焼き鳥メニューを用意できる。新しい料理を増やす余裕もできた」。
串刺し機メーカーのコジマ技研工業(神奈川県)は今年、居酒屋向けなどの串刺し機の販売が前年比3倍に。小嶋道弘社長は「ここ1年間で、機械を使わないと仕込みが間に合わないとの声が急増した」という。
近年は串を外して食べる人も多く、東京都内の焼き鳥屋が「串から外さずガブリついて食べてください」と訴えて話題になったほど。たかが串、されど串。居酒屋もメーカーも、実は苦心している作業なのだ。
人手不足は、外食の現場を変えている。東京都府中市にある「リンガーハット府中駅南口店」を訪ねると、厨房に中華鍋と熱い炎が見当たらなかった。
代わりに使うのが、自動鍋送り機付きの四つのIHヒーター。「ちゃんぽん、入りましたー」とオーダーが来ると、調理人は一番右のヒーター上に、野菜とスープを入れた鍋をセット。鍋は15秒ごとに左のヒーターに移りながら加熱される。三つ目に来たら解凍した麺を入れ、四つ目で強く加熱されて仕上げ。1分強で完成して客へ運ばれた。
厨房はかつて4~5人いたが、今や2~3人。熱気の中で重い中華鍋を振るイメージは裏切られ、店長は「汗もかきませんね」と涼しげだ。野菜は工場でカットされているので包丁も使わず、調理人の作業は麺を菜箸でほぐす程度だった。
リンガーハットは「マンパワーからマシンパワー」と掲げて自動化を進めており、9割の店で自動調理機を導入した。シニアや女性も働きやすくなり、広報担当の石田修啓さんは「採用した人が長く働いてくれる」という。
人手不足のなか、企業は元気なシニアに熱視線を送る。総務省「労働力調査」によると、労働力人口に占める65歳以上の高齢者の比率は2016年に約12%。10年前の06年は約8%で、年々伸びている。
ディスカウントストアのドン・キホーテは、開店前に商品陳列などの準備をする「ライジングクルー」として、シニアを積極的に採用している。早起きが苦にならない人の生活スタイルに合った働き方。「短時間、少ない日数で働きたい」との声が増えており、1日2時間・週2日から働けるようにした。学生が集まりにくい時間だけに、シニアの力が重宝されている。
モスバーガーは、直営店で働くスタッフの5%がシニア層。半数を占める店さえあり、今や「モスジーバー(爺婆)」と親しまれる存在にまでなった。
高校生以上ならば、募集時の年齢制限はなし。今春に退職したパート女性は、84歳まで厨房で週5日働いていた。野菜の仕込みなど家事経験をいかせる職場のため、長く働きやすいようだ。モスフードサービス社長室の金田泰明さんは「シニアの働く職場は、シニア客が利用しやすい」と話す。
日本マクドナルドが目をつけているのは、主婦パワー。9月から、主婦向けのクルー体験会を始めた。
東京都内であった体験会では、50代の女性2人が若手クルーと一緒にハンバーガーをつくっていた。
「オニオンはこれくらいの量です」「チーズは紙と平行にのせます」「お肉はこう持つと破れやすいので、気をつけてください」
クルーが見本を示しながら、作業手順を一つずつ丁寧に教えた。参加者の主婦は当初緊張していたが、途中から笑顔もこぼれた。
体験した東京都杉並区の54歳女性は、大学生の息子と娘がいる。出産で仕事を辞めたが、子育てが一段落し、復帰を考えていたという。久しぶりの仕事は不安だったようで、「どんな仕事をするかがわかり、参加してよかった」と話した。
マクドナルドの“主婦クルー”は、全体の約2割。店長の赤井麻友さん(35)は、娘の出産をはさんで約17年働いている。「時短で働いて出産した人が身近にいて、女性が働きやすい雰囲気だった」という。3歳になった娘を育てながら、現在は自らも時短で働く。「こうした(職場環境の)強みを積極的にアピールしようと思った」と長敦子人事本部長は体験会のねらいを話す。
働きたいと思いながらも求職活動をしていない女性は、16年に274万人(労働力調査)。求職活動をしない理由で最も多いのは「出産・育児のため」だった。主婦を職場に招くには、こうした課題を企業側がどう解決するかが問われる。
商業施設を運営するイオンモールは、「イオンゆめみらい保育園」を施設内に設置している。14年に千葉市の幕張新都心の店で開園したのを皮切りに、グループ全体で計15カ所に設けた。
店のある都道府県で、20年までに1カ所以上の設置をめざす。モール内のアパレル店は20~30代の若い女性従業員が多いため、保育園で出産後の職場復帰を支えるねらいだ。
開園日はモールの営業日に合わせ、365日朝7時~夜10時。遅番や土日に働く従業員も使いやすい。保育園がおむつの準備や着替えの洗濯などを担ってくれるため、利用者は手ぶらで送り迎えできる。
保育園立ち上げの担当者の東英衣子さんは「おむつに名前を書いて必要枚数を毎日持っていくのは大変。自分の経験から、これはなくそうと思った」と話す。
ファミリーマートも10万人の主婦の採用方針を掲げ、保育園開園を今後予定している。女性が働きやすい職場づくりの競争は続く。
