当事者意識と自立心のない社員は要らない

総合当事者意識と自立心のない社員は要らない

ハーツユナイテッドグループの玉塚元一社長(座談会開催時は、ローソン会長)が社員に求めるのは、「当事者意識と自立型人材」だ。至極もっともな意見だろう。そうした人材を年齢に限らず大胆に登用する、象徴的な取り組みを実施した。
新たなことをゼロから立ち上げなくてもいい。その代わり、既存の業務の範囲で、しかし、これまでにはあり得ないような創意工夫をして、100だった期待値のところに300のアウトプットを出す。そうした人材を徹底的に褒めたたえる表彰制度も作った。そうすることで、会社はどのような人材を求めているのかを皆に知らしめるというわけだ。
玉塚元一(たまつか・げんいち)氏
ハ-ツユナイテッドグループ社長 CEO(最高経営責任者)。1985年、旭硝子入社後、海外駐在を経て、日本IBMに転職。1998年ファーストリテイリングに入社し、2002年、同社社長に就任。2005年にリヴァンプ(企業再生事業)を設立し、2010年にローソン顧問に就任。同社社長を経て、2016年、同社会長に就任し、2017年5月に退任。経営は「体が資本」として、早朝のトレーニングを習慣とする。

「とくに役割が重たい立場で、自立型ではなく、当事者意識の乏しい方には、申し訳ないけど、その任を降りてもらう。そして、年齢などは関係なく、そういうマインドがある人を抜擢する。それをきめ細かく緻密に経営と人事で連携しながら戦略的に行い、ローテーションもする。そうしなければ、会社を維持し、成長させていくことはできません」と玉塚氏は語る。

玉塚氏はファーストリテイリングで社長兼COO(最高執行役員)を務めたが、同社に入社した1998年当時のことをこう話す。

「当時、ユニクロはまだ年商700億~800億円の会社でした。ところが柳井正さんはご自分で『3倍のルール』というのを決めていた」(玉塚氏)。

つまり、売上10億円の会社が30億円になるとき、30億円の会社が100億円になるとき、100億円の会社が300億円になるとき、300億円の会社が1000億円になるとき、1000億円の会社が3000億円になるとき、3000億円の会社が1兆円になるという節目では、会社の構造などを大きく変えないと、イノベーションが起きなくなって、成長の限界に至るというルールだ。

「柳井さんがすごいのは、ずっと昔から働いている古参の役員を一人ひとり説得して退いてもらい、代わりに僕とか、ファミリーマートの社長になった澤田貴司さんとか、マッキンゼーから来た堂前宣夫さんなどを大挙して招いたんですね。大胆な血の入れ替えをしたわけです。それがちょうど1000億円の壁の手前にいたときのことですが、この後、1000億円から3000億円になるかならないかという『プラトー(高台)』にいると彼は本当に思っていて、そのために構造を大きく変えなくてはいけないという強い信念を持っていたわけです」(玉塚氏)。

会社のトランスフォームはトップにしかできない

その結果、当然、カオスが起こった。玉塚氏が見たファーストリテイリングはおかしいことだらけだった。たとえば、なぜこんなに工場がたくさんあるのか。もっと絞り込んだほうがいいと彼は思った。あるいは、なぜ店舗のオペレーションにこんなに無駄な面があるのか。それらの意見を率直に進言した。その結果、会社はカオスになった。しかし、それが彼に求められたことだった。

柳井氏は、「君が言うとおりだ。そっちに振れ!明日すぐやれ!」という号令をかけ続けたと言う。そして会社はトランスフォーム(転換)した。そんなことはトップにしかできない。それを怠るとスピードが鈍る。多くの日本企業が言われてきたように、トップがスピード感を持って意思決定をして舵を切らないと、企業は早晩沈没してしまう。

しかし、それだけではやはり無理だと玉塚氏は言う。

「僕は理想の組織というのは、強烈なトップダウンと強烈なボトムアップが健全にぶつかり合う組織だと思っています。もしかしたら、これからの数年は、とくに僕らのような業界はトップダウン7割、ボトムアップ3割くらいでいく必要があるかもしれませんが、理想は50対50です。当事者意識を持った自立的な社員がどんどんいろんな意見を挙げてきて、『それはお前が言うとおりだ、やれ!』みたいな役割分担がある組織が理想的な組織だと思います」(玉塚氏)。

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鼎談を終えて

左から野村ホールディングスの永井浩二CEO、三井住友フィナンシャルグループの宮田孝一会長、ハーツユナイテッドグループの玉塚元一社長

3名の経営者はそれぞれ、トップダウンのリーダーシップの重要性を示しつつ、社員一人ひとりの自立心と積極的な行動を求めている点は同じだ。組織におけるイノベーションは、両者の健全なぶつかり合いがあって初めて生まれるものだろう。

鼎談を通じて分かったことは、日本を代表する大企業であっても、今求められている人材はベンチャー企業のそれと同じだということだ。定常期に生きる人材ではなく、変革期に生き残れる人材。つまり、環境変化を先読みしつつ、迅速に構想を組み立て、それを実行する人材ということだ。

会社を生き残らせるために、経営者は必死で考えていることが、改めて明らかになった。そのような経営者と一人ひとりのビジネスパーソンの構想力と実行力が組み合わされる企業が、イノベーションを興し続ける企業であると、3名の経営者の対話を通して強く感じた。