IT技術者も6時退社、社長会議は半分に ストライプ ストライプインターナショナル社長の石川康晴氏

総合IT技術者も6時退社、社長会議は半分に ストライプ ストライプインターナショナル社長の石川康晴氏

若い女性に人気のアパレルブランド「アース ミュージック&エコロジー」などを手がけるストライプインターナショナル。23歳で創業した4坪の店を、売上高1200億円超の企業に育て上げたのが石川康晴社長だ。衣だけでなく食、住も含めたライフスタイル全体に事業領域を広げ、グローバル展開を目指す同氏に、人材の活用術を聞いた。

■中国市場攻略 年収上限2500万円では勝てない

――2011年から中国に進出するなどグローバル展開を本格化しています。海外事業における人材の確保にはどのような戦略で臨んでいますか。

「中国には僕自身も2年間住んで現地の事情をつぶさに見てきました。人の考え方も、マーケットの規模も日本とは全く違う、難しいマーケットなので、人事についても考え方をガラリと変えないといけません。特に営業の最前線で戦うCOO(最高執行責任者)や、デジタル戦略を担うCOD(最高デジタル責任者)などは、現地のことを知り尽くした人材でなければ務まらない」

「ですから、底なしのお金を出してでもいい人を現地で見つける覚悟が必要です。中国最大のインターネットショッピングモールであるT-mall(ティーモール)や、中国版ツイッターとも言われる微博(ウェイボー)の上位幹部などは、世界中の企業で取り合いになっていますから、日本の感覚で『取締役の年収は会社の定款で2500万円まで』などと言っていては勝負にならない。いかに覚悟を決めて、人材調達のバジェットを用意できるかがカギを握ります」

■「面白いことができそう」という期待感

――2015年からは「ライフスタイル&テクノロジー」に事業領域を広げました。日本でも今、テクノロジー人材は引く手あまたですが、優秀な人材の採用には何が必要ですか。

「テクノロジー人材については、実は今、大きな潮目を感じているところです。というのは、これまでIT(情報技術)企業の中にとどまってきた優秀な人材が、『このまま同じ会社にいても、成長できない』という理由で外に出始めているんですね。そんな中、うちがアパレルという領域にとどまらず、いろんなチャレンジをしているというメッセージが届きやすくなってきた」

「レンタルサービスの『メチャカリ』で、シェアリングエコノミーの世界でイノベーションを起こすんだと言い始めた頃から、面白そうだというのでいい人材が集まるようになりました。やはり、彼らにとっては、新しいチャレンジができるかどうかがすごく大事なんですね。それともう一つ、IT業界に5年も10年もいる人たちは、毎日終電が当たり前の世界なので、体が疲れてきている。うちはITの部署でも、夕方6時には帰れます、というので人材が引き寄せられてきている面もあります」

■生産性向上のカギは会議の半減

――定時退社が定着しているのですね。生産性向上、残業削減というのはいまどの会社も最重要課題として取り組んでいますが、成功のカギはなんですか。

「効果が大きかったのは、会議の時間を半減したことです。ある時、プロジェクトチームを作って、一体うちの会社でどのくらいの会議をしていて、そのうち報告のための会議と、創造性を発揮して新しいことに取り組むための会議の割合がどうなっているのか調べたことがあるんです。聞くところによると、日本の場合、報告会議が85%で創造性会議が15%だそうです。うちの会社はさすがにそんなことはないとタカをくくっていたのですが、実際に測ってみると8割が報告会議で、日本の平均とあまり変わらなかった」

「そこでプロジェクトチームが僕にこう言いました。『2時間の会議で30個の議題を話そうとしても、途中で脱線したりして、結局決まるのは1個か2個。だとしたら、会議を1時間にして議題も最初から5個ぐらいに絞りましょうよ』と。時間を半分にすれば、その中で話す事も断捨離しなくてはならない。それを、あらゆる会議について徹底し、報告と創造性の割合も半々にしていこうと決めました。それを実行した結果、残業が大幅に減ったのです」

「僕自身にとっても、これは非常に大きなメリットがありました。以前は経営会議は2時間というのが絶対だと思っていましたが、これが1時間になった。さらに、これまで出ていたいろんな会議について、本当に社長が出る必要があるかどうかを精査した結果、僕が出る会議自体も半分に減りました」

「それによって、人に会ったり、本を読んだり、大学に行ったりと、創造的なリサーチに時間を割けるようになったんです。経営者が思考停止すると、どれだけ優秀なミドル層がいても会社全体は思考停止してしまいます。フェイスブックだって、社長が社内会議に追われていたら、あれだけクリエーティブなサービスは生まれないでしょう。なるべく経営者を自由な環境にするというのが、創造性を大切にする会社には必要だと思います」

■社内の弱者の声に耳を傾ける

――他に組織運営で心がけていることは?

「キーワードは『フラット』ですね。フラットが創造性を生む。フラットでないといい意見が出てこない。社員がたくさんの問題を言ってくれると、だいたいそこにダイヤモンドがある。それを経営の力で改革していくと、儲けにつながります。特に大事にしているのは、アルバイトや新入社員、入社したての中途採用の人など会社に染まりきっていない人の意見です。この人たちに、困ったことはないか、他の会社から来てこの会社が変だと思うことはないかを聞くと、非常にいい意見が出てきます。彼らは組織内ではまだ弱い立場にいて、普段はあまり発言できないことが多いのですが、彼らにこそ、本質的な部分が見えているんです」

「社員が社長に意見を言いやすい空気をつくるのも大事ですね。先日も福岡で懇親会をして80人くらいのスタッフが集まりました。そこで僕も若い子たちにまじって、『(若者に人気のバンドの)バックナンバーやワンオクロック、サチモスっていいよね』とか無理した会話をするんです。ほんとは、僕は『サザンオールスターズがいいよね』と言いたいところなんですけど。でもそこで『この社長は話を聞いてくれるな、面白いな』というのが伝わるんでしょうね」

「翌日、彼女たちのいる店を視察に行くと、もう関係がフラットになってるんですよ。そこで『困ったことはないですか』と聞くと『実は…』と思いがけない話が出てきて、それがマニュアルを変えるきっかけになったりする。これまでマニュアル変更の大半を引っ張ってくれたのは新人です。人間というのは3年も5年も同じ仕事をやっていると、悪い事もいい事も含めて、マニュアルがこれだからと改善する気がなくなってくるものです。常に新鮮な視点からの意見を取り入れながら、柔軟に組織を変革できるリーダーでありたいと思っています」