「定年」撤廃する大和証券 狙いは2つの効果

総合「定年」撤廃する大和証券 狙いは2つの効果

大和証券グループ本社は2017年7月、営業職を対象として定年制度を撤廃する。13年から営業職について70歳まで継続雇用することにしていたが、今後はその年齢上限をなくす。実質的な定年の撤廃で、大企業としては珍しい取り組みとなる。

週5日のフルタイム勤務となり、給与体系は一般の社員と同じ。賞与も営業成績などに基づいて同じ基準で支払われる。契約上は嘱託社員となり、1年ごとに更新する。年1回の健康診断と人間ドックによって健康状態を確認、本人の希望に応じて原則、働き続けてもらう。

現在、大和証券における最高齢の営業担当者は神戸支店に勤めており、17年7月に68歳の誕生日を迎える男性社員。2年後に70歳以上として働き続ける最初の社員となる見通しだ。

定年廃止は、給与体系や人員配置の考えを変えなければ、中長期的に人件費が膨らむ恐れがある。にもかかわらず、大和証券はなぜこのような決断をしたのか。狙いは大きく2つある。

まず、顧客への営業体制強化だ。高齢の顧客からの資産運用や相続の相談が増える中で、同世代の社員が継続的に営業やコンサルティングを担当することで信頼獲得と業績向上につながると判断した。

 

■「数十年後は定年がなくなる」

 

もう一つは、中高年を中心とした社員のモチベーション向上が見込めること。日本企業では役職定年を迎えたり、定年後再雇用の対象となったりすると給与が大幅に減るケースが多く、中高年社員の意欲減退の要因になっている。今回の制度改定で、営業担当者にとっては生涯にわたって働き、成果に応じた給与を得られる環境が整ったことになる。大和証券では15年に45歳以上の社員を対象に研修プログラムを拡充し、積極的にスキル向上を果たした社員は給与が優遇されるよう人事制度を変更するなど、働く意欲に配慮してきた。

人事担当の望月篤常務執行役は「超高齢化が進む中で、数十年後には社会から定年という概念がなくなる可能性がある。スキルを高めながら働き続けられる選択肢を用意することが重要と判断した」と説明する。

 

営業職の定年撤廃を決断した中田誠司社長CEO(最高経営責任者)(写真:竹井俊晴)

営業職の定年撤廃を決断した中田誠司社長CEO(最高経営責任者)(写真:竹井俊晴)

 

今回の定年廃止の推進役となったのは、17年4月に就任したばかりの中田誠司社長CEO(最高経営責任者)だ。営業体制の大幅見直しなど、矢継ぎ早に改革策を繰り出している。

コンサルティングをAI(人工知能)で自動化するロボアドバイザーといった新技術が登場しているほか、金融庁が「フィデューシャリー・デューティー(顧客本位の業務運営)」を求め始めるなど、大和証券のような対面証券は、ビジネスモデルの改革を迫られる。

鈴木茂晴最高顧問、日比野隆司会長と歴代トップが進めてきた働き方改革を推進し、成功に導けるか。中田社長の手腕が問われている。