総合「プロ人材」仲介、3県で活発に 大企業から中堅・中小に
都市部などの大企業で働く専門知識や技能を持った人材を北陸の中堅・中小企業に環流させる試みが進んでいる。3県では2015年末から16年春にかけて「プロフェッショナル人材」の転職を橋渡しする戦略拠点を設けた。石川や富山では自治体の工夫もあって採用例が増えつつある。地域を超えた人材流動化が進めば地場産業の活性化に追い風となりそうだ。
「ものづくりに夢を持って挑戦している企業で経験を生かせると思った」。樹脂の成型加工会社、石川樹脂工業(石川県加賀市)の第2工場長を務める坪内道晴さん(64)はこう話す。かつて大手電子部品メーカーで生産管理などの業務などに携わっていたが、16年4月に転職した。
同社は自社ブランドの仏具や業務用食器の受注を増やすとともに、炭素繊維などの新分野にも参入。「会社が変わる中で製造部門の強化を担える人材の確保が必要だった」(同社)。「5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)」の工程管理の徹底と次期工場長の育成のため、マネジメント経験の豊富な坪内さんを採用した。
転職を後押しする役割を果たしたのが石川県だ。内閣府の「プロフェッショナル人材事業」を受け、同県は戦略拠点「いしかわ就職・定住総合サポートセンター」を16年4月に開設した。担当者が地元の中堅・中小企業を訪れて求人ニーズを聞き取り、転職を支援する。いったん成約した企業は続けて採用を希望するケースが多いという。
同拠点はパソナに委託する県のUIターン事業(無料職業紹介)と一体で運用している。成約を増やすため、県外から専門人材を雇用した企業に半年間、人件費の8割を補助する事業も始めた。村弘行マネジャー(津田駒工業元常務)は「人材紹介会社を使ったことがない企業にも利用してほしい」と語る。
富山県は16年2月、富山県新世紀産業機構に委託して戦略拠点を開設した。16年度に246件の相談があり、40件が成約したという。製造業が盛んな同県では「自社に足りない人物像を明確に持っている企業が多い」(担当者)ため採用ニーズが高く、成約数は全国でも上位の実績という。
地元企業の経営者らと対話して必要な人材を見極める「マネジャー(本部長)」には北陸銀行元副頭取の川合哲氏を抜てき。「人脈や知名度があり、相談に乗ってほしいという企業は多い」(同)
16年度の成約数が16件だった福井県も実績拡大へ知恵を絞る。同県の戦略拠点は2月、福井村田製作所などの地場企業や都市部の大企業9社と人材交流などに関する協定を独自に結んだ。転職に限らず、出向などの緩やかな形態で人材を呼び込む狙いだ。17年度中にも数件の出向が決まりそうだとしている。
金融機関との連携も強化し、企業訪問する際には同機関の営業担当者に同行してもらう予定だ。同拠点は新分野開拓に向けた産学官金の連携組織とも協力しており、同拠点の担当者は「魅力あるプロジェクトを創出し、プロ人材を確保したい」と話す。
北陸新幹線の開業などを背景に、首都圏と北陸では人材交流が進みやすい環境が整った。現在、同拠点の活用は製造業が多くを占めるが、自治体の創意工夫や受け入れる企業の意識改革が進めば、サービス業などへの拡大も期待できる。