建設職人不足、暮らしに影響 保育園がプレハブで開園も

総合建設職人不足、暮らしに影響 保育園がプレハブで開園も

建設業界の人手不足が、暮らしに身近な施設の運営に影響を与え始めた。景気回復などに伴う建設需要の高まりで職人が集まらず、保育園や公共施設の工事が計画通りに進まない。施工業者はマンションなど利益率の高い事業を優先的に受注する傾向が強い。今後も労働力不足は続く見通しで、市民生活に密着した施設の整備が滞る懸念が広がりつつある。

東京都世田谷区立池尻小学校の校庭に立つプレハブ小屋に保育園児たちの声が響く。「世田谷はっと保育園」(運営・社会福祉法人種の会)の仮設園舎だ。4月に新築の園舎で開園するはずだったが、消費増税前の駆け込み需要の増加で人手が足りなくなった建設会社が入札を見送ったため、新園舎の完成が遅れた。

全国の市区町村で最多となる1109人(2014年4月時点)の待機児童をかかえた同区は、約4千万円を支出してプレハブを設置。保育スペースを確保できたのは、1~3歳の84人分にとどまり、同園は0、4、5歳児69人の受け入れを断念した。

再度の入札で受注業者が決まり、新園舎は8月に開園する見通しにはなった。同園の片山佳子園長は「それまで提供する保育サービスの質に問題はない」と話すものの、長女が同園に通うフリー編集者の矢作かおりさん(37)は「パイプがむき出しのプレハブは耐震性に不安を感じるうえ、遊んでいるうちにけがをしないか心配」という。

厚生労働省によると、鉄筋工や左官などの技能労働者の有効求人倍率は12年4月に4.24倍、14年4月に6.7倍と高水準が続く。一方で、建設業に従事する人の数は減少。総務省の労働力調査によると、1993年に420万人だった技能労働者は昨年時点で338万人まで減った。建設業で働く人の高齢化も進み、今後も引退による減少が続くという。

工期の遅れだけでなく、建設計画そのものが白紙に戻るケースも。東京都中央区のオフィス街の一角に広がる約4千平方メートルの更地。図書館などが入る複合施設「本の森ちゅうおう」が16年の開館に向けて建設される予定だったが、入札不調で区が計画を凍結した。老朽化した施設の一部を建て替える計画の下総精神医療センター(千葉市)も応札に至らなかった。

人手不足が深刻化するなか、国土交通省は1月から建設関連団体を集め、職人を増やすための具体策について協議を始めた。

建設経済研究所の林田宏大・研究員は「業者は限られた労働力を採算のとれる事業に優先配分している」と指摘。「景気の回復や東京五輪の開催に伴い建設需要は今後も増えるだろう。市民生活に支障が生じないよう、自治体などが工事費を見積もる際、人件費を適切に引き上げたり、資材価格分を反映させたりするといった取り組みを進める必要があるのではないか」と話している。