人材活用・育成に、教育ベンダーや人材派遣業者をどう生かすか―IT人材育成[戦略と実践]

派遣人材活用・育成に、教育ベンダーや人材派遣業者をどう生かすか―IT人材育成[戦略と実践]

人材不足が質・量ともに深刻な中で、企業のIT部門には、単なるコスト削減ではなく、仕事の質を落とさずに効率を上げるという難題が突きつけられています。その取り組みにあたっては、人材の確保と育成がキーになることは言うまでもなく、今までどおりの意識で、教育ベンダーや人材派遣企業と付き合うわけにはうかないのです。

教育ベンダーと人材派遣業者が置かれている現状

スキル標準が浸透しつつある中、人材育成の中核を担うべき教育ベンダーはどのような教育プログラムを提供しているのでしょうか。実態としては、その大半がITSS(ITスキル標準)キャリアフレームワークやUISS(情報システムユーザースキル標準)タスクフレームワークに、自社提供のトレーニングをマッピングして見せるといったことだけしかしていない――そのように見えるのは筆者だけでしょうか?

また、人材不足や企業のコスト意識の高まりを背景に、人材派遣企業は順調に業績を伸ばしました。しかし、言われるままに人材を派遣してきて、この状況変化の中で、需要環境や受け入れ企業の考え方に左右されてしまい、結局戦略も何もあったものではない――そう感じるのは筆者だけでしょうか?

すべての教育ベンダーや人材派遣企業がこの通りだとは思いませんが、印象として強いものがあるのは確かです。

これまでも同じような状況がありました。企業は教育費のカットや人件費の削減を一気に進めました。結果として教育ベンダーの売り上げは頭打ち、しかしコストが膨らんで企業責任をもって雇用する正社員を敬遠して、いつでも契約解除できる、手っ取り早い派遣人材に頼ってきた側面があります。

例外はあるものの、そのときに念頭にあったのは、「時間が経てば元に戻りそう」という感覚で、事実、ほぼそれに近い状態を経験してきました。

しかし、残念ながら今回は、今までのような単純な状況ではないようです。もちろん、教育費のカットや人件費の削減は行われるでしょうが、並行して、企業の成長やビジネスに貢献してくれる人材の保持・獲得・育成の機運がより高まることになるでしょう。

裏を返すと、企業側が選択に入り、今までのような「待ちのビジネス」ではなくて、プロアクティブなソリューションを提供してくれる教育ベンダーや人材派遣業者しか残れなくなるということです。

自社の人材戦略を支援してくれる教育ベンダーを選ぶ

2002年末にITSSがリリースされて、2003年早々に教育ベンダーは2つの施策に手をつけました。1つは、ITSSキャリアフレームワークに、自社トレーニングメニューを紐づけること。もう1つは、ITSSのスキル診断ツールを作って、トレーニング受講に結びつけることです。

両施策とも、教育ベンダーとしては至極当然な手段だと言えます。しかし、悲しいかな受け入れる企業側の担当者の知識やスキルの低さを露呈した形となってしまいました。情報不足とは言え、それらを何も考えずに受け入れて実施することがITSSの導入・活用のしかただと勘違いしてしまったわけです。また、研修メニューを作るだけの短絡的な考えも散見されました。

こうして失敗事例を紹介しましたが、今でも同じようなことを続けている企業が数多くあります。問題はそれでよいと考えている点にあります。その一方で、それではダメだと気づいた企業もあり、大きく二分されています。

企業のビジネスに貢献する人材の保持・育成・獲得をしっかり考えようとしている企業は、優秀な人材をその担当にあてています。しかし、どのような基準で考えればよいか、過去の経験からは、よい方策をなかなか導き出せないものでもあります。

そうした企業は、次に示すような視点で教育ベンダーを選ぶことになると考えます。もちろん、コンテンツ、人材などしっかりとした教育体制を持っているのは当然でしょう。

人材派遣業者のこれから

では、人材派遣業者についてはどうでしょうか。例えばパソナテックのように、早くからITSSに着目し、うまく自社戦略に取り込んでいる企業も存在しますが、まれなケースと言えます。ほとんどの企業が登録人材を独自管理し、企業のリクエストとマッチングする方法をとっています。また、教育ベンダーなどが作ったITSSスキル診断ツールを使って、登録を促進することぐらいで、ほんの一資料にしかできていないのが現状です。

少し前になりますが、派遣人材の受け入れを広げてきた企業が歯止めをかけ始めました。その影響は、即座に人材派遣企業の売上減に現れ題しています。人材不足から派遣単価も上がり続けてきましたが、逆に降下現象も出始めました。需要と供給のバランスが崩れてきたのです。

さらに、受け入れ企業側が今後望んでいる方向性をしっかり把握できている人材派遣企業がどのくらいあるのかといえば“?”です。要望があるから人材を提供する、何とか登録人材を増やそうと努力する、送られてきた人材の出来が悪いなどとクレームを受けると、別の人材を探してあてがう――この図式では需要側の都合で転んでしまうことになりかねません。

今、再び人材不足になり、人をあてがうだけの状態に戻りつつあるのは危険な兆候と言えます。受け入れ企業も、ファイザーのようにアウトソースも含めた総合力を意識し、それがゆえに人材育成も区別なく実施するという方向性も出てきています。つまり、単なる人の提供ではなく、パートナー企業としてとらえているということです。パートナー企業になるには、受け入れ企業に企業価値を評価してもらう必要があります。

真のソリューションパートナーとなりうるベンダーを選ぶ

今までは、ITベンダーやSIerが顧客のソリューションパートナーを“自称”してきました。つまり、システム構築・運営のみに限定した話です。企業が求めるのは人材であり、人材の保持・育成・獲得を支援できる企業が、真のソリューションパートナーとなりえます。これが教育ベンダーや人材派遣企業が進化した姿です。

自社で人材活用を考える責任者や担当者は、「待ち」の姿勢のみではなくて、以下に挙げるようなことのできるソリューションプロバイダーへとトランスフォーメーションできる教育ベンダーや人材派遣業者を選ぶ必要があります。

●顧客の現状組織機能を検証する
●顧客の経営方針、事業戦略からあるべき組織機能を明らかにする
●組織機能を支える人材像を明確にする
●顧客の人材ポートフォリオ(A Is)を見える化する
●人材戦略やTo BeとAs Isのギャップから、人材育成計画、調達計画策定を支援する●場合により、評価プラン策定なども支援する
●以上のプロセス運営(PDCA)を支援する