受難…労働者派遣法改正案 成立確実も施行日に間に合わない? 野党は施行延期論で揺さぶり

派遣受難…労働者派遣法改正案 成立確実も施行日に間に合わない? 野党は施行延期論で揺さぶり

労働者派遣法改正案の「出口戦略」が定まらない。政府・与党は8月初旬の成立を目指しているものの、野党の抵抗でお盆明けまでずれ込めば、9月1日施行に黄信号が点灯する。過去に2度も廃案になり「呪われた法案」と揶揄されているだけに、「三度目の正直」となるか。それとも二度あることは三度ある!?

「改正案に定めている施行期日通りに施行できるよう国会で速やかに審議をして、一日も早く成立できるようお願いしたい」

塩崎恭久厚生労働相は7月10日の記者会見で、参院で8日に審議入りした改正案の早期成立を訴えた。改正案は企業が派遣労働者を受け入れる期間の制限を事実上撤廃する内容。今国会の重要法案の一つで、柔軟な働き方の実現を目指す狙いだ。

早期成立にこだわる背景には、10月1日に「労働契約申し込みみなし制度」が発動することがある。民主党政権時代の前回改正で、派遣労働者保護のために盛り込まれた制度だ。

派遣労働には、秘書や通訳など26業種の「専門業務」と、それ以外の「一般業務」がある。専門業務でいえば、秘書が来客者にお茶を出すことは本来の業務ではない。ただ、実際の現場ではお茶を出すケースもあり、「業務範囲が曖昧だ」との指摘が絶えなかった。このため、今回の改正で専門と一般の区分を撤廃することを盛り込んだ。

だが、改正案が成立しなければ、10月1日以降、本来業務以外の仕事をすると違法派遣とみなされ、派遣先企業が派遣労働者を直接雇用しなければいけなくなる可能性がある。訴訟に発展することも否定できない。

そうした派遣労働の現場の混乱を解消するため、政府・与党は多少の無理をしてでも8月初旬に改正案を成立させ、9月1日施行にこぎつけたいというのが本音だ。厚労省は、政省令や指針の作成、労働政策審議会(厚労相の諮問機関)への報告といった施行までの準備期間を逆算すると、「8月5日成立がデッドライン」と訴える。

ところが、8月5日成立というシナリオは、風前の灯火になりつつある。

安全保障関連法案の7月15日の衆院特別委員会採決をめぐる野党猛反発の余波が参院側にも及んでいるからだ。参院民主党の榛葉賀津也国対委員長は同日の記者会見で、「乱暴な採決を行った以上、参院もこの問題以外の委員会について審議に応じるわけにいかない」と強調した。実際、改正案の審議を行う予定だった16日の参院厚生労働委員会は「波高し」ということで取りやめになった。

加えて日本年金機構の年金情報流出事件も足を引っ張る。個人情報が漏れた該当者2449人に対し、機構側が「情報は流出していない」と誤って回答した不手際も判明。野党から集中審議を求める声が絶えず、その分、改正案審議は大きく停滞しかねない。与党関係者は「波高しどころか、波は大荒れだ…」と漏らす。

昨年、厚労省による条文ミスと衆院解散で2度も廃案の憂き目に遭っている改正案。会期を大幅延長したことで、今国会での成立は確実視されているが、“デッドライン超え”は避けられそうにない。政府・与党はみなし制度の10月開始を維持した上で、今回の改正の施行日を9月中のいずれかの時期に延期した場合の想定も始めた。

そうした中で、改正案に反対する民主党は「来年4月1日施行に修正してはどうか」と政府・与党を牽制する。施行を延期する場合、施行日が改正案に盛り込まれているため、参院で修正した上で衆院に戻し、再び採決する必要がある。しかも「改正案の施行日が10月1日以降に延期されれば、みなし制度の施行日も一緒に修正する必要がある」(厚労省)という。

そうなれば混乱は広がるばかりだ。なかなか妙案が見いだせず、自民党厚労族は「施行日の修正も含めて野党と調整する必要がある。とにかく成立させることが先決だ」と焦りを隠さない。