女性雇用“27歳女子”に企業の熱視線が集まる理由 今こそモヤモヤを捨てキャリア戦略を!
多くの企業にとっていま、“27歳女性”はのどから手が出るくらいの存在だ――。
主婦のパートタイム派遣事業などを展開するビースタイル社長の三原邦彦氏はこう話す。なぜ27歳なのか。「新卒入社して5年。それなりの実務経験を積んでいる。そして結婚もしていない(東京都の女性の平均結婚年齢は29.9歳)。
つまり、時間の制約なく働くことができて一人前に仕事がこなせる層、それが27歳なんです」。
政府は「2020年までに指導的地位に女性が占める割合を30%以上にする」という目標を掲げている。だが、企業内にはもちろん、現在の労働市場にも管理職を務められるような女性はわずかだ。
そこで、企業の間では優秀な若手を中途採用して、将来の管理職として育てようという機運が高まっている。管理職予備軍としても、“27歳女子”は企業にとって貴重な人材なのだ。
女性にとってもベストタイミング
企業ばかりでなく女性自身にとっても、“27歳”はキャリアを考えるうえでもっとも重要な時期だ。
結婚・出産前で柔軟に動きやすいうえ、「いまの会社でキャリアを継続、発展させることができるのか」という就職活動時とは違った視点で、自分の仕事を見つめ直すことができる。
そして、「この会社で働き続けることは難しい」と判断し転職を決断した際にも、新しい職場で出産まで約3年の準備期間がある(初産年齢の全国平均は30.4歳)。
出産前に社内で“信頼貯金”を蓄積しておけば、出産後もスムーズな復職が見込める。
ビースタイルは4月1日に新会社「Shift」を設立し、女性向けの転職サービスを始めた。コンセプトは「27歳からの10年後を見据えた転職」。
紹介するのは、女性がライフステージの変化に合わせて柔軟にキャリアを継続、発展できるような企業に特化。ダイバーシティ経営に対する経営陣のコミットメントがあったり、生産性を重視したワークスタイルが実践されていたり、能力や実績による評価体制ができているような企業に限っている。
また、合わせてShiftでは、女性向け、企業向けそれぞれへの研修事業も展開するという。
新会社設立にあたって、三原氏は女性のキャリアについて多くの定量調査、ヒアリング調査を重ねたという。その中で見えてきたのは、「アラサー女性は必ず自分の将来についてモヤモヤしている。そして、そのモヤモヤは大抵、知識がないことから生じている」ということだった。
キャリアの中断で2億4000万円の損失!
たとえば、「仕事がつらいから辞めたい」と悩んでいる女性は多い。「だが、結婚・出産を経ても安心して暮らし続けるためには、働き続けることが何よりもの“安心”であることを多くの女性は知らない」と三原氏は言う。日本人の給料の中央値はこの10年間で約100万円下がっている。つまり、今後ますます夫の稼ぎだけで家族の生計を成り立たせることは難しい時代になっていくだろう。しかも、結婚したカップルの3分の1が離婚に至っているという現状もある。
三原氏は続ける。「いったん離職して子育てが一段落ついた後に再就職した場合、年収300万円を超えるケースはわずか約1割でしかない。仮に年収300万円で戻ったとしても、正社員としてキャリアを継続した場合に比べて生涯年収は約2億4000万円少なくなる。キャリアを中断するというのはそういうことなんです」。また、「出産後は時短で働いて……」と考える女性も多い。だが、多くの日本企業は、出産後の女性を正社員として雇用し続けることはできても、時短勤務でキャリアアップさせるすべは持ち合わせていない。「安易な時短勤務には功罪があり、すべてのワーキングマザーに勧められる働き方ではない」(三原氏)。
実際のアラサー女性は、将来のキャリアについてどう考えているのだろうか。
「時短でも評価を上げられるように、今のうちから社内貯金は重要だよね」「時短で、パフォーマンスを上げられない人が次々と辞めていくのを見てきました。ああはなりたくないなあ」「短時間でも生産性を上げられるようにしたい」「今のうちに、どんどん手を挙げて実績を作っておかないといけないと思う」「今からマネジメント経験を積んでおきたい」「独立したほうが時間の融通は利くと思います」
4月のある平日の早朝、28歳の女性が集うある「朝会」を訪ねた。テーブルを囲んで、参加者が口々に将来のキャリアについて語っている。
この朝会は、人材会社のエン・ジャパン、クチコミサイト運営のウェディングパーク、ソーシャルゲーム大手のドリコムの3社が共同で開催したもの。
「自社内だけだとロールモデルも限られているし、悩みを語り合う機会もなかなかない。他社で活躍している同世代の話を聞くことが刺激にもなると思いました」。
幹事の一人、ドリコム広報部の佐藤志穂さんが会の趣旨を説明する。佐藤さんは自身も28歳だ(開催時)。
開催を早朝にしたのは、参加者の多くが連日の残業で夜は抜けられないという現実があるためだ。各社内で大きな期待を背負いながらバリバリと仕事に猛進しているのが彼女たちの日常なのだ。
20代女性の「現実的なイメージ」
「社内貯金が必要だ」と話す女性は、子どもの体調による欠勤を余儀なくされても、社内の信頼をえている先輩たちを身近に見てきた。
「30歳で結婚。子どもは2人、35歳までには出産を済ませたいな。30代のうちは子育てと両立が大変そうなのでバリバリは働けないけれど、時短勤務制度を利用して働き続ける予定です」。時短で仕事を続けることについて、現実的なイメージを持っているようだ。
「短時間でも生産性を上げられるように」と発言した女性は、「結婚して子どもができたら、仕事より家庭に重心を置きたいと考えています」と話す。
就職活動をしていた際には、子育てをしながら働き続ける自分は想像していなかったという。「専業主婦になろうと本気で思っていました。でも、子どもができてもある程度の生活レベルを維持するためには共働きは必須だと思うようになって。今の仕事は楽しいので、”どうせ続けるなら”この仕事でと考えています」。
テーブルを囲んだ参加者の中には、早くも独立を模索している女性もいた。「今の仕事で実績を上げて早めに独立したいと思っています。でも出産も早くしたい。そう考えると出産後は今の会社に復帰したほうがいいかなって考えるようになりました。会社員として、子育てとの両立を頑張ってから独立を考えたほうがいいのかもしれません」。
彼女は既婚で、同じ会社で働く夫も同じく独立を志している。自分のキャリアアップと出産のタイミング、さらには夫の仕事の状況とのバランスに悩んでいた。
結婚、出産を経ても企業で働き続ける女性は少しずつ、でも着実に増えつつある。同時に、子育てと仕事の両立に奮闘する女性たちの姿も多く話題に上るようになり、今の20代女性たちは、自らがたどるだろう将来のキャリアについて、より現実的に考える機会が増えている。
いまの30~40代ワーキングマザーは、ロールモデルが限られる中、暗中模索でそれぞれに自らのキャリアを作ってきた。三原氏は言う。「いまのワーキングマザーにはロールモデルがなく、出産後『いきなり本番!』を強いられてきた。必要に迫られて初めて働き方を変えたり、キャリアを真剣に考え直したりした。続く若い世代は、参考にすべきロールモデルも増え、それなりの準備期間があるはず。結婚前にこれからのキャリアを線で考えるような機会を持ってほしい」。今の仕事を続けるにせよ、キャリアチェンジを図るにせよ、20代後半からの準備が重要なことは言うまでもない。
