女性雇用賃上げ、じわり恩恵「子育て費用に」 非正規「雇用安定を」
賃上げが幅広い業界に広がった2014年春の労使交渉。12日の一斉回答日に久々のベースアップ(ベア)が決まった会社員の家族は「子育てに充てたい」と歓迎した。大手の業績回復は中小企業にもじわりと恩恵を広げるが「まずは設備投資が先」などと賃上げには慎重な経営者も多い。非正規雇用で働く人からは安心して働ける制度づくりを求める声が上がった。
◆久々ベア「うれしい」 大手電機メーカーで働く夫と川崎市の社宅で暮らす主婦(30)は4歳と2歳の姉妹の子育て中。6年ぶりとなるベア実施に「いずれは自分たちの家を持ちたい。ありがたい」と喜んだ。昨年末に長男を出産した同市の主婦(27)は「育児にお金がかかるのでうれしい。消費増税の穴埋めで終わらないようにしたい」と話した。
トヨタ自動車も6年ぶりにベアを実施。4年前に入社した愛知県みよし市の男性社員(27)は「会社人生で初のベア。景気の良さを初めて感じている」。新興国経済の先行きや消費増税の影響への不安もあり「まずは堅実に月々の貯蓄額を増やしたい」という。
幅広くベアの波が広がっただけに、賃上げを見送った企業で働く人が感じる温度差は大きい。IT関連会社勤務の長女(21)と東京都文京区で暮らす女性(60)は「娘は『景気のいい業界はいいね』と羨ましげにつぶやくだけ。将来が心配」とため息をついた。
◆賃上げしたいが… 中小の工場が集積する大田区。長く続いた苦境を脱し業績が上向きつつある中小も増えているが、賃上げに踏み切る経営者はまだ多くない。
アルミ販売・加工を手掛ける「マテリアル」の細貝淳一社長(48)は「成長のために設備投資が先」。売り上げは回復基調だが、今春の賃上げには慎重姿勢だ。作業効率化のために新たな機械を導入予定で「従業員のモチベーションを維持するには賃上げが必要。生産能力を上げ、賃上げにつなげる」と話した。
大田区の中小企業でつくる大田工業連合会の舟久保利明会長(70)によると、賃上げを検討しているのは数社。舟久保さんは「消費増税分くらいは賃金を上げたいと望む経営者は多い」と説明。「ベアに踏み切る余裕があるなら下請けへの発注単価を上げて」と大手企業に注文をつけた。
◆正社員との待遇差大きく 賃金アップの波は契約社員やパートなどの非正規労働者にも広がっているが、雇用の安定という面も含めて正社員との待遇差は依然として大きい。
「今後、もっと多くの企業で賃上げの動きが広がってくれれば」。都内の半導体関連商社に勤める契約社員の女性(48)は期待する。73歳の母親と2人暮らし。30万円の手取りでは「家賃や生活費を賄うのに精いっぱい」。雇用の打ち切りを通告された女性は安定を求めて正社員の職を探している。「国は非正規雇用でも安心して働ける制度づくりを進めてほしい」と訴えた。
連合が2月、派遣社員らを対象に実施した電話相談には「突然雇い止めを告げられた」「有給休暇を取らせてくれない」など978件の相談が寄せられた。連合は「非正規労働者は組合のない職場で働いている人も多い。現場の声を聞いて待遇改善につなげたい」としている。