派遣「派遣法改正は悪影響」が7割、緊急アンケート結果
2015年3月13日、政府は3度目になる労働者派遣法の改正案を国会に提出した。派遣法の改正はシステム開発、IT業界に大きな影響を与える問題であり、ITproはWebで同改正案について緊急アンケートを実施した。
改正案が今国会で可決されれば、2015年9月1日に施行となる。施行までの猶予期間は既に6カ月を切っている。自社や自分にどういった影響がありそうかを検討するうえで、このアンケート結果を参考にしてもらいたい。
「派遣法の改正で、システム開発や保守・運用に影響があると思いますか?」という設問に対して、300件を超える回答のうち「悪い影響があると思う」と「どちらかと言えば悪影響があると思う」を合わせると全体の7割に達した(図1)。これに対して、「良い影響があると思う」と「どちらかと言えば良い影響があると思う」を合わせても2割に届かなかった。
自分自身に対する影響も尋ねたが、こちらは「悪い影響があると思う」と「どちらかと言えば悪影響があると思う」を合計して5割で、技術者個人よりもシステム開発そのものへの悪影響を予想していることが明らかになった(図2)。
悪影響を憂慮する声が多い理由については、「派遣制度の規制強化によって、違法行為(偽装請負など)が増えると思いますか?」への回答結果が参考になるだろう。「増えると思う」と「どちらかと言えば増えると思う」を選んだ回答者は全体の7割を超えた(図3)。
派遣法改正への関心は高いが、実際の対応はまだ進んでいない実態も明らかになった。「派遣法の改正について関心がありますか?」という問に対しては、「ある」と「どちらかと言えばある」で、全体の97%を超えている(図4)。
一方で、「派遣法の改正で、あなたが所属する企業や部署では対策(法改正の内容の把握、影響調査など)を始めていますか?」という質問に対して、「既に始めている」、「今後、始める予定がある」の選択肢を選んだのは全体の4割弱だった(図5)
今回のアンケート結果で見る限り、システム開発の分野に関しては、派遣法改正について、否定的な見方が多かった。
多様な立場から多様な声
以下では、アンケートに対する回答のうち、実際に派遣技術者と関わっている方からの声を示す。業種や企業規模、派遣法とのかかわりなどで分類している。読みやすさなどを考え、趣旨を損ねない範囲で一部内容を編集したものがある。
IT企業(1000人以上)、主に派遣技術者を送り出す側
最初は、主に派遣技術者を送り出しているという従業員1000人以上のIT企業からの回答だ。
IT企業(1000人以上)、主に派遣技術者を受け入れる側
以下では主に派遣技術者を受け入れている1000人以上のIT企業からの声を示す。3年という期間が与える影響について触れているものが目立つ。
民主党などが指摘するような同一労働・同一賃金の法制化も実施すべき。
但し長期的に見れば、現在の属人化およびITベンダの技術空洞化の改善につながるのではないか。現在は派遣技術者に実務技術が集中し、直営社員は単なる書類作成係になっているIT企業も少なくないのではと思っている。その状況が変わるのであれば多少の痛みは仕方がない。
この法律の趣旨は、企業が派遣社員をより雇用しやすくするためのものだとしか思えない。これは企業が人を安く、業績悪化時には一番最初に解雇しやすい人材として、人材を確保するための法律への改悪だと思う。
また、専門26業務の撤廃の趣旨も不透明だ。3年で別の人に引き継げない技術だからこそ、期間を設けずに雇用されつづけているのではないだだろうか。
安定した雇用は派遣にはさらになくなってしまうことになります。
会社としてもすぐに切りやすい派遣のほうが都合がよいでしょうし、ますます正社員への雇用機会が減ってしまうような気がしています。
IT企業(1000人以上)、派遣技術者を送り出すことも、受け入れることもある
派遣技術者を送り出すことも受け入れることもあるという、1000人以上のIT企業からも回答があった。まだ影響の全貌がわからないためか、悪影響を意識したものが多い。
IT運用部門などである程度ノウハウの必要な技術者が勤務年数の上限を設けられるという事は、業務の継承時の負担が増える事に直結し、それをかいくぐる為に請負の形を取った事実上の派遣契約が増えるのではないかと危惧します。
法案上では3年程度の猶予期間があるとされていますが、切替時にはかなりの混乱が予想され、申請→受理までの期間がどの程度かかるのか想像もつきません。
正直なところ、誰のための法案なのか首を傾げたくなります。
IT企業(100人以上1000人未満)、主に派遣技術者を送り出す側
従業員が100人以上1000人未満のIT企業では、主に派遣技術者を送り出している立場からの回答が一気に増える。改正案について、ある程度は情報を持っていることがうかがえるものが多い。
この派遣先は企業単位なのか?企業系列単位なのか?事業所単位なのか?特定部門単位あるいは特定PJ単位なのか?
・(企業間の)賃金の見直しサイクルが早くなるかも(長く居続けてもなかなか上がらない現状がある)
・同じ現場に居続けることで、その仕事しか出来ないという事も減るかも知れない。
IT企業(100人以上1000人未満)、主に派遣技術者を受け入れる側
100人以上1000人未満のIT会社では、主に派遣技術者を受け入れている企業からもある程度の回答があった。法改正だけで業界の健全化は難しいという複数の意見がある。
派遣元、就労先、労働者の三者の意識の改革が必要で、行政は罰則を含めもっと厳しく取り締まるべきと思う。
IT企業(100人以上1000人未満)、派遣技術者を送り出すことも、受け入れることもある
派遣技術者を送り出すことも、受け入れることもある100人以上1000人未満のIT企業からの回答でも、まだどういった影響があるかはっきりしないというものが複数ある。
・正規契約を望んでいる派遣契約者を守る法
・正規契約を望んでいない派遣契約者を守る法
・悪質業者の監視、罰則の強化
をセットで考えてほしい。
また、専門26業務の撤廃もナンセンス。区分けの仕方がまずいのであって、区分けを行なうこと自体は正しいと思う。上手く区分けができないからといって全撤廃とはお粗末過ぎる。
【形態模式図】
官公庁等(発注元)→大手ベンダ(受注先/業務委託元)→中小ベンダ(業務委託先/不足要員募集)→中小ベンダ(要員提供)
※不足要員募集・提供の部分がどのような扱いになるのか不明
IT企業(100人未満)、主に派遣技術者を送り出す側
100人未満のIT企業では、主に派遣技術者を送り出している側の回答が多い。特定労働者派遣、あるいは専門26業務への関心が高く、法改正が自分の働き方に直結すると判断していると感じさせるものがいくつかある。
特定労働者派遣業を撤廃したところで、SESがほとんどのこの業界には影響がないという企業様もいるようです。
正社員雇用の特定労働者派遣業を撤廃というのはどういうものかと思う。特定を無くす意味が分からない。
派遣さんもその後の業務が必ずある訳ではなく、給与も上がることもない今よりも、ますます正社員との賃金格差が広がるだけ。
国会で色んなことで「格差」について議論されているが、政府としてそれを助長しているに過ぎない。
専門26業務の撤廃は影響が大きいと思う。派遣であって派遣ではないと思う。派遣という契約名称だけが独り歩きして現場を全く無視していると思う。役所や政治家の机上の論理だけが先行しているように見受けられる。専門26業務に関しては派遣というよりも協業しているに近いと思う。長期で行うべき仕事が3年という短期で打ち切られる可能性があるのはどうかと思う。長くやるところで得られるノウハウが大事な仕事が多いのは技術や知恵が必要な業種ではよくあること。少なくとも仕事における3年は短すぎます。
専門26業務の場合自社では正社員としての雇用だが取引先との契約が「派遣」という形になっている事も多いと思います。よく政治家が言っている「派遣」とは全く違いますよね。携わる仕事の内容も違うと思います。誰でも出来る仕事ならそれでも良いでしょう。専門26業務はそうではない場合も多々あると考えます
一部の悪い環境のおかげで全体が割を食うってのはおかしいと思います。上から締め付ければそりゃあ管理は楽でしょうけど。現場はたまったもんじゃない。
望んで派遣をやっている者はどうすべきか
受け入れ先として大手企業は特定派遣から業務委託に移行するも、中小企業は違法行為または正規社員への業務移行のしわ寄せなどが発生するものと思ってます。
中小企業ほど対応が出来ず、結果貧富の差が広がる要因になるのではと懸念してます
このため、業務の継続性を考える企業では業務委託形態(偽装請負状態)に移行するのではないか。
特定派遣廃止では、多くの特定派遣業者が事業の継続が難しくなるため、廃業等が多発し中小IT企業のエンジニアが失業、低賃金の登録型大手派遣企業での寡占化が進むのではないか。
不明な点は事業所の定義、派遣者は事業所から300~400kmも離れている現場に派遣されているのに事業所と言えるのかがよくわからない。
仮に本人や関係者の通報だとして関係者にどれほどのメリットがあるのか?
ザル法になる未来しか見えない
IT企業(100人未満)、主に派遣技術者を受け入れる側
1000人以上の場合とは反対に、100人未満のIT企業では主に派遣技術者を受け入れるという企業からの回答は少ない。回答は冷静に事態を受け止めている印象だ。
IT企業(100人未満)、主に派遣技術者を送り出すことも、受け入れることもある
主に派遣技術者を送り出すことも、受け入れることもある100人未満のIT企業からの回答は、改正案の内容に加え、現状に対する認識の厳しさが目立つ。
派遣法の変更は、近視眼的かつ「特定事業者(大手派遣会社)」のみ有利な構造を持ち、このままでは、日本の将来が心配です。国が、派遣労働を雇用の高度化と流動化を図る、国の発展(国民の生活と資質の発展)の手段としているのでしたら、職業安定所を発展させ国が業務依頼主や労働者の経歴の情報を蓄積し、情報の公開を両者にコントロールさせた上で公開して(省庁の垣根を越え国家的に取り組めば、ITで可能でしょう)、派遣労働者が労働義務を果たすために必要な前提…、派遣労務の労働条件と作業内容の情報、および対価報酬交渉、労働者の経歴と評価という個人価値プロデュース情報行使権を派遣労働者に返す必要があると思います。
派遣者になりたくないのであれば、なぜより良い正社員になるために良い大学を卒業したりしないのか?自分の努力不足を棚に上げて権利だけ求める人を救済するのは正しいことなのか?
また社員が本当に安定する働き方なのか??
個人を責任ある大人に育てる教育制度が国に無いこと、家庭に無いことが本当の問題では!?
日本は自己責任を極力負わなくて良い子供社会だなと、つくづく思います。
ユーザー企業システム部門
ユーザー企業のシステム部門からの回答もいくつかある。派遣技術者の待遇などを気にしたものが複数あった。
そうでなければ、意味がなく悪法であると考える。
コストダウンも必要だが、過剰なコストダウンは会社を弱らせると思う。
人材サービス会社
人材サービス会社からの回答もある。人材サービス会社での立場によって、改正案に対する見方は異なっており、実際に派遣されて働いている技術者からの回答もあった。
派遣技術者が失職すると大騒ぎしていますが、スキルある方は人材会社が、無期雇用化される機会が増えるので、マイナスだけではないと思う。
そういった意味でも真面目な技術者は報われると思うし、雇用条件改善も見込まれる。
特定派遣の中でもブラックな派遣元が消えることで、コンプライアンス意識のあるところが残るようになる。
新たな派遣のルールが固まれば、請負のルールも明確になりどっちつかずの契約とは区別できるようになる。
契約はほぼSESに移行しているので国が介入できない範疇にある。
SESでは納品義務がないため、単価は下がると思うが、許可が下りない場合、企業はSESを選択するしかない(人材不足のため、単価が下がる保証は見当たらないのも事実)。
多重派遣がまかりとおっている現状なのに法規制でどうにかするとかいっている時点ですでにおかしい。IT業界自体の構造は変えられないし、国が動いてもなにも変わらないと思うが、単価がどうなるのかまた期間なども少なからず影響を受けると思う。
事実、今行っている現場では、プロパーよりも派遣技術者のほうが業務知識もシステム知識も豊富なので、派遣技術者が変わると業務を遂行できなくなる。
専門業務を撤廃するのも「簡略化」というが、そもそもその領域を特別扱いにしていた背景が分からないので撤廃して大丈夫なのかという不安がつきまとう。
「派遣労働者」にも様々な業種があり、商習慣も全然違うのでひとくくりにするのに違和感がある。
ITの場合はスキルの高い技術者が下手に企業にがっちり捕まれるより、組織に縛られず難易度や重要性の高いプロジェクトに身軽に参画できる仕組みの方が業界全体に寄与するのではないかと思う。
今から一般派遣の会社へ移籍しても正社員にはなれない。
不安定な派遣要員になるのは嫌だ。
派遣=非正規労働者とする考え方を改める方向に進む。
その他
上記以外の立場で派遣技術者と関係している方の回答もある。全体に改正による悪影響を懸念している。
派遣労働者の立場からすれば、特定労働者派遣よりも一般労働者派遣のほうが、劣悪な環境(賃金、社会的地位)を余儀なくされていると思う。
特定労働者派遣の撤廃などという案で良い方向に向かうとは思えない。
・IT以外の業界の反応がわからない
アンケートは、ITpro上で3月18日から25日まで実施し、回答を受け付けた。全体で330件の回答があった。




