日本企業の取締役会、9割が女性ゼロ-先進国最低、価値向上足枷

女性雇用日本企業の取締役会、9割が女性ゼロ-先進国最低、価値向上足枷

TOPIX構成企業の9割が女性取締役を1人も登用していないことが分かった。安倍政権は女性活用を成長戦略の1つに掲げているものの、先進国では最も遅れているのが実態だ。

ブルームバーグ・データによると、TOPIX 構成企業1858社のうち女性を取締役に登用している企業は196社と、全体の10.5%にとどまっている。また、女性取締役比率は安倍政権発足時の1%から1.5%と上昇しているものの、ノルウェー(40%)やフランス(28%)、米国(18%)などを大きく下回り、先進24カ国中で最も低い。

安倍政権は成長戦略として20年までに女性が指導的地位に占める割合を30%以上とする目標を掲げ、政府は従業員301人以上の民間企業に目標や取り組みを16年度から行動計画に明記するよう義務付ける方向だ。また、目標達成に向けて全上場企業に対し、役員に1人は女性を登用することを要請している。

ゴールドマン・サックス証券のキャシー・松井チーフ日本株ストラテジストは「日本のように均一主義の社会では、企業の意思決定プロセスで多様な意見を取り入れることは、様々な人たちのニーズを効率的に捉えられる」と指摘。ダイバーシティ(多様性)は「経営陣の監督者である取締役会のコントロール機能の強化にもつながる」とみている。

企業価値を左右か

男性の取締役しかいない企業は、自己資本利益率(ROE)でも女性登用企業を下回っている。取締役が全員男性の企業の5年平均ROEは5.4%なのに対し、女性を1人以上登用している企業(196社)は6.8%だった。

女性活力を引き出している企業を対象にファンド運用しているBNYメロン・アセット・マネジメント・ジャパンの鹿島美由紀日本株式運用本部長は、企業価値への影響を評価するのは時期尚早だが、「長期のトレンドになれば影響が出てくる可能性は高くなる」と見ている。

女性のキャリア進出が盛んな米国では、非営利団体(NPO)カタリストの調査(08年までの5年間)によると、フォーチュン500構成企業のうち女性取締役を1人も登用していない企業のROEは10.5%。一方、3人以上登用している企業では15.3%と、明確な差が見られる。

BNYの鹿島氏は、「人材確保に苦労しない企業がある一方、人材が集まらず店舗閉鎖に追い込まれている企業もある」とし、「すでに差は出始めている」と指摘する。厚労省が公表した1月の有効求人倍率は1.14倍と22年ぶりの高水準が続き、人手不足となっており、人口減少が見込まれる日本では、今後女性の人材活用がさらに重要になってくる。

見えないバリア

しかし、企業サイドからは女性の幹部候補の確保が難しいとの見方も出ている。昨年7月の帝国データバンクの調査で、都内の印刷企業は「経営層、中間管理職にもっと女性がいて良いと思うが、もともと適齢期の女性が少ない」との見方を示した。

男女共同参画白書によると、女性は就職時に正規雇用者となる割合が男性よりも低く、管理職の候補となり得る人材が少ない。さらに女性が育児・介護と仕事を両立させながら、管理職や役員に昇進し、意思決定過程に参画していくのは難しい環境だ。

内閣府・女性の活躍状況「見える化」検討会委員の北川哲雄青山学院大学大学院国際マネジメント研究科教授は、「働きやすい環境を提供し、離職率の改善に早めに取り組むことは企業価値を高める上でも重要になる」との見方を示す。

北川教授は日本人女性が仕事を辞める理由について「育児・介護の他に、仕事への不満や行き詰まり感が多いと言われている」と指摘。「女性が能力を発揮できる環境整備、目に見えないバリアの解消に向けた企業の取り組みを、各報告書等で公開し、見本となることに期待したい」と述べた。

20年度末までに女性管理職比率30%以上を掲げる損保ジャパン日本興亜ホールディングスは、12年1月から女性管理職の育成プログラムを実施。これまでに約60人が参加し、部長2人、グループ会社役員1人を輩出した。同社の女性管理職比率は12年3月の4.5%から14年9月時点で10.9%に上昇した。あいおいニッセイ同和損害保険では、今春の人事異動で初の女性役員と営業支店長が誕生する。