派遣改正派遣法の成立に暗雲 懸念される労働現場の混乱
「思わぬ誤算だった」(厚生労働省幹部)──。2閣僚の辞任など政治的混乱で宙に浮いていた労働者派遣法改正案が、10月28日、ようやく衆議院本会議で審議入りした。

Photo by Hiroaki Miyahara
改正法の柱は、2015年4月から、全ての業務において3年ごとに人を入れ替えれば、企業が派遣社員を使い続けることができる点だ。従来、派遣社員に任せられるのは最長3年までで、例外的に秘書や通訳などの「専門26業務」に携わる派遣社員に期間制限はなかった。専門26業務は、定義が曖昧であるため廃止する。
現在、改正法の国会会期内成立に、暗雲が垂れ込めている。かく乱要因は維新の党だ。強硬反対姿勢を貫く民主党と共闘すれば、審議日程が遅れ、次期通常国会での継続審議となってしまう。
政府与党・厚労省は、11月7日に衆議院で、17日に参議院で採決に持ち込むベストシナリオを描いており、「成立の確率は70%」(厚労省幹部)と自信を見せる。
だが、綱渡りのスケジュールを勘案すれば、「成立するか否かは五分五分」(人材会社幹部)というのが現実的なラインだ。仮に、改正案が次期国会での継続審議となった場合、来年4月からの施行に間に合わせるのは難しい。
通称“長妻プラン”の余波
そうなれば、労働現場では二つの問題が浮上するだろう。
一つ目は、多くの派遣社員が失職するリスクだ。
10年2月、長妻昭厚労相(当時)の肝いりで「専門26業務適正化プラン(通称“長妻プラン”)」が実施された。期間制限のない派遣労働者が酷使されているので取り締まろうという目的だったが、この制度は結果的に、専門26業務から派遣社員を長きにわたって締め出し失職させた。人材会社が業務改善命令を受けたり、労働局の指導で派遣社員の雇用契約が終了するケースが増えたりした。
こうした状況下で、企業が派遣社員を入れ替え続ける期間が3年程度続いた結果、「来年5~7月にかけて、3年の雇用期限を迎える派遣社員が多数いる。改正法が施行されなければ、彼らは派遣先に直接雇用されることなく、路頭に迷う」(人材会社幹部)という。
二つ目は、派遣社員を使っている派遣先にも混乱が生じる点だ。
改正法が4月に施行されることを前提に導入された、「労働契約申し込みみなし制度(みなし制度)」が、来年10月1日にスタートする。派遣先が、違法派遣と知りながら派遣社員を受け入れている場合に、派遣社員に労働契約の申し込みをしたもの、と見なす制度のことをいう。
改正法が施行されなければ、定義が不明瞭な「専門26業務」も廃止されない。つまり、違法派遣であると判断する根拠が曖昧なままに、みなし制度が見切り発車してしまう。派遣先の混乱は避けられそうにない。