働くママが創る 子どもが楽しく過ごせる預け先

女性雇用働くママが創る 子どもが楽しく過ごせる預け先

子どもが楽しく過ごせれば、親は安心して生き生きと働ける。仕事と育児の両輪をまわせる環境を自らの手で作ろうと取り組む女性が出てきた。方法は様々だが、共通するのは子どもの視点を重視する姿勢だ。

「ママサポーター」と一緒に子供の世話をするアズママの甲田恵子社長(東京都中央区)

「ママサポーター」と一緒に子供の世話をするアズママの甲田恵子社長(東京都中央区)

 

「子どもを信頼できる人に任せられるならもっと働きたい女性は多い」。近所同士で子どもを預け合う「子育てシェア」を全国展開するアズママ(横浜市)の甲田恵子社長(38)はそう話す。

甲田さんは従来、娘(9)を出産後も仕事重視の会社員だったが、リーマン・ショックの余波でIT企業や投資会社で築いてきたキャリアを失った。失業中に職業訓練校で、仕事と育児の両立難で離職した女性たちに出会う。一方で社会参加を求める専業主婦も多いと知った。「両立したい女性と社会貢献したい女性が出会えれば、問題は解決する」と思った。

全国各地で親子同士の交流イベントを開催。顔見知りになったうえで、例えば保育園のお迎えに間に合わない場合にサイトでSOSを出すと、対応可能な母親がお迎えや一時預かりを担う。

預かる側の5割超は保育士などの有資格者で、8割は小学校低学年以下の子の母親。保育士などとして復帰するにはまず自分の子をどこかに預ける必要がある。子育てシェアなら自分の子と一緒に世話でき、潜在的な労働力を生かせる。「子どもは友達の家に遊びに行く感覚」(甲田さん)

料金は1時間500~700円。アズママは母親のネットワークを生かした広告などで収益を得る。開始1年で登録者は1万人に広がった。

子育て世帯のうち、妻が働く割合は20代後半から30代で年々高まっている。従来は子どもが成長後にパートなどで仕事を再開していたが、キャリアを中断せずに働き続ける女性が増えている。

小学生が放課後、学校内や児童館で過ごす学童保育の充実に奮闘する女性もいる。住友生命保険CSR推進室の須之内たか美さん(35)だ。

NPO法人が行う学童保育のプログラムを視察する住友生命の須之内たか美さん(横浜市戸塚区)

NPO法人が行う学童保育のプログラムを視察する住友生命の須之内たか美さん(横浜市戸塚区)

 

7月から、長崎県や福島県、東京都などの学童保育でドッジボール日本代表が技を伝えたり、心臓外科医の指導の下、実際に手術で使う糸を使って縫合を疑似体験したりする「出張授業」が始まった。住友生命がCSRの一環で資金や全国の営業網を提供。放課後NPOアフタースクールという団体が運営を担う。

このプログラムを事業化してきたのが、自身の娘も来年度から小学生になる須之内さん。2011年、「子育てにやさしい会社」を目指す佐藤義雄会長(当時社長)から「今後は保育園卒園後の子どもの居場所がなくなる『小1の壁』が問題になる」とプロジェクト立ち上げを指示された。夫は単身赴任中で一人で子育てをするなか「保育園後、働く母の不安は小学校の放課後の過ごし方に移る」と実感していた。

安倍晋三政権は成長戦略で30万人分の学童保育拡充を掲げた。しかし、須之内さんは「量も重要だが、質の議論がおざなりになっている」と危機感を抱く。

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現状では専用の部屋で宿題などをするだけの学童保育も多い。子どもにとってそこが魅力的でなければ母親は働くことに罪悪感を抱いてしまう。子どもが通い始めて数カ月で「つまらない」「行きたくない」と言い出し、仕事を辞めたりパートに切り替えたりする母親たちの話も耳にしていた。

放課後の預け先としては英語学習や理科実験などを提供する民間企業も増えている。ただ、須之内さんは「親の就業状況や収入などで子どもが分断されてしまう」と、誰でも通える学童保育の充実にこだわる。

「働く母親はキャリアアップに関心があっても、学ぶ場も子どもを預ける場も自分で見つけなければいけない」。08年、双子の出産を機に夫の勤務地で同居するためにメーカーを辞めた大洲早生李さん(35)。フリーランスのPRコンサルタントとして働く傍ら、昨年、働く母親が学ぶ場「東京ワーキングママ大学」を立ち上げた。秋からの3カ月コースでは実践的な課題に取り組み、管理職に必要なスキルを身につけられるようにする。

東京ワーキングママ大学の設立に向け議論する大洲早生李さんとプロジェクトメンバー(東京都港区)

東京ワーキングママ大学の設立に向け議論する大洲早生李さんとプロジェクトメンバー(東京都港区)

 

通常、管理職育成セミナーなどは平日夜間が中心。だが同プログラムは休日に子どもを連れて参加できる。「平日子どもを預けている親は、休日くらい何か特別なことをしてあげたいと考える」との親心をくみ、母親が学ぶ横で子どもも創作活動や簡単な科学実験を体験できるようにした。

大洲さんは「育児中の母親は効率的な働き方を追求する。そんなママのリーダーが増えれば男女や世代に関わらず働きやすい環境を作ることにつながる」と、子育て中の女性こそ管理職を目指してほしいと考える。

政府や企業の女性活用の議論は大人の利便性を追いがちで子どもの視点が不十分。それでは解決できないとの問題意識が母を動かす。