人工知能面接が示すHR Techの道筋 テクノロジーが人材戦略を変えていく

AI人工知能面接が示すHR Techの道筋 テクノロジーが人材戦略を変えていく

人材戦略へのテクノロジー活用が始まっている

リクルートスーツに身を包んだ学生。就職面接に臨んでいるようだが面会している先にはスマートフォンの画面——。これは人工知能(AI)による採用面接の一場面だ。人材採用サポートを行なうタレントアンドアセスメントが開発した「SHaiN」は、スマートフォンでAIによる面接が受けられるアプリ。

科学的根拠に基づく採用メソッドをもとに、企業が求める人物像や採用基準に沿って、AIが人間の代わりに採用面接を行なう。採用にかかる時間やコストを削減し、公平な基準で資質を分析することができる。

受験者は自分の都合が良い時間・場所で、採用面接が受けられるため、面接会場から遠方に住む受験者の機会損失や他社選考とのバッティングを防げるという。

SHaiNのアプリ画面

近年、こうした人材関連領域において、デジタルテクノロジーの活用が顕著になってきている。そうしたテクノロジーは総じて「HR Tech」(Human Resource Technology)と呼ばれる。

人工知能面接がもたらすもの

日本でも徐々に盛り上がりを見せ始めているHR Techだが、米国ではすでに企業価値10億ドル超えのユニコーン企業が登場するなど、その大きな可能性に注目が集まっている。

その背景には、生産性向上の追求や人材確保・育成における課題感があるといえる。とくに日本においては少子高齢化社会を迎えるにあたり、自社にマッチした若い人材の確保は喫緊の課題になりつつある。

採用においては、いかに多くの採用機会を設け、効率よく選考を進めるかが鍵となってくる。そんな中、AIやビッグデータ解析に基づく選考が注目されているのだ。冒頭で挙げた「SHaiN」もそんな採用を支援するHR Techの一つ。導入することにより、以下のようなメリットがあるとされている。

●採用活動にかかる労力・コストの削減
従来の一次面接に費やしていた時間と労力を、人間にしかできない採用活動業務(候補者の動機づけなど)にあてることができるため、採用の質・量を向上させられる。

●採用基準の統一化
人間による採用活動で課題視されがちな“評価のばらつき”を改善し、採用基準を統一することが可能に。応募者は面接官の外見や態度に影響を受けることがなく、採用企業も面接官の個人的な印象や経験則で判断されないため、公平な採用面接を実施できる。

企業に学生を送り出す大学側では、こうした動きに対応する就職支援を開始したところも現れ始めている。帝京大学では「SHaiN」を試験導入し、学生120名に対してAI面接プレ体験会を実施。これは、
・学生の資質のさらなる向上
・進路決定に伴い、より本人に合った企業選び
・教職員の指導レベルアップ
を図るためのものだという。将来的にはAIに大学が持つデータをより多く学習させることで、学生の特徴や長所・短所を明らかにし、低学年次のキャリア教育科目の授業にも活かしていくとのこと。

帝京大学では「SHainN」を試験導入した

しかし一方で、面接を受ける就活学生からは反対の声があがっているという。就職情報サイトのディスコが行なった2019年卒業予定の学生に対する調査(2018年3月7日発表)によれば、「AIに面接試験の合否を判定される」ことについて、7割近く(67.5%)が「よいと思わない」「まったく良いと思わない」と回答したという。

このギャップは、今後HR Techの活用が本格化していくなかで課題となることだろう。

スキマ時間を活用した人材教育にテクノロジーを活用

では、「人材育成」におけるHR Techの活用はどうだろうか。育成の主眼となるスキル向上には、オンライン学習サービスが使われることが多いようだ。その代表的なサービスが「Schoo(スクー)」。ITを中心に英語やビジネススキル、マーケティングなどさまざまな内容が受講できるオンライン講座サービスだ。

IT・ものづくりエンジニアの転職・派遣支援を行なうパソナテックでは、Schooのビジネスプランを導入。法人アカウントを運用し、同社の登録者にこれを付与することで、人材育成に役立てているという。

オンラインであるため、スキマ時間を使っていつでもどこでも受講でき、またタイムライン上で講師と生徒が双方向でコミュニケーションできる点を評価しているという。生放送・録画という2通りの動画で学べるため、文字だけのテキストに比べて情報量が多く、わかりやすいと受講生からも好評とのこと。

ほかの受講者が質問している内容も役に立つという。体験者によれば、録画授業の場合、受講中に疑問に思ったことがすでに生放送時に他の学生が質問をしており、講師が回答している例が多く、学習効率も上がるという。

目まぐるしくビジネス環境が変化する現代においては、効率的な育成・学習が求められる。わずかなスキマ時間をも有効に活用し、社員の生産性向上に寄与できる仕組みが求められているのだ。そんな中、オンライン学習サービスは効果的な施策となり得そうだ。

人材情報を一元管理し組織力の把握に役立てる

継続的な人材戦略を実施していくなかで、「評価」も重要な業務の一つである。正しい評価を効率的に行なうことで、人材の育成・配置も適切に行なうことが可能となるであろう。

カシオヒューマンシステムズの「iTICE(アイティス)」は、そんな評価を支援する人財マネジメントシステムだ。さわやか信用金庫では、人材活用の見直し、人材育成のさらなる効率化などの必要性から、同サービスを導入した。

それまでペーパーベースであった職歴や取得資格などのデータを一元化し、組織全体の能力を見える化することに成功。多角的な視点から人材情報を把握することで、職員のキャリアプラン構築、組織力のSWOT分析が可能となり、人事異動時の基礎資料として活用するという。

また、人材マネジメント上で重要となる「変化」についても同サービスで容易に把握可能。同金庫では階層別・職務別に研修を実施しており、その効果測定に受講後の報告書やアンケートを利用している。iTICEでは、これを人事システムの既存情報を紐付けることで、各職員のプロフィールシートを簡単に作成・閲覧ができるため、人材情報を一元管理できるようになった。これによって人材の成長曲線を全社的に共有することができ、人材活用に効果を発揮しているという。

正確かつ効率的な労務を実現

人材関連業務の中でも「労務」は、勤怠管理や社会保険手続き、給与計算から福利厚生、法務など多岐にわたる業務を行なう。そこに求められるのは正確な事務処理能力と雇用・労働に関する法律の専門的な知識だ。

しかし、人が行なうことによる計算ミスや入力漏れなどが起きることも。また、各種の申請や届出など決められたルールにのっとり、既定の書式で処理を行わなければならず、対応するスピードが遅くなることもある。

こうした課題に対してHR Techを導入することで、改善を図ることが可能となる。パソコンによる入力や計算によって、ミスをなくすことができるだろう。また、申請や届出についても適切なフローで処理を支援してくれるため、正確にスピードを上げて対応することができるようになるのだ。

そうした労務処理を支援してくれるサービスの一つが「Workday」。日本でも日産自動車やソニー、富士フィルム、グリコなどの大手企業が導入しており、実績も豊富だ。財務・人事部門のさまざまな数値をデータ化し、ルール変更や計算も自動で行なえる。このため、処理のミス防止やスピーディな対応が可能となる。

このように、さまざまな人材関連領域でHR Techの導入が進んでいる。人材戦略は少子高齢化による労働力不足が危惧される日本において、企業の生き残りをかける重要な要素だ。このことから、今後もますますHR Techへの関心は高まり、多くの製品やサービスが誕生してくることだろう。