管理職も営業も 変わる女性の採用、チャンスはここに エグゼクティブ専門の転職エージェント 森本千賀子

女性雇用管理職も営業も 変わる女性の採用、チャンスはここに エグゼクティブ専門の転職エージェント 森本千賀子

「女性活躍推進法」の施行からまもなく2年。多くの企業で「働き方改革」も進み、女性がワークライフバランスを重視しながら働けるチャンスが広がってきました。一方で、2017年の完全失業率は2.8%と23年ぶりに3%を割り込み、有効求人倍率は1.50倍で44年ぶりの高水準でした。こうした雇用環境の追い風の中、女性の採用はどう変わってきているのか、どんなチャンスが生まれているのか。活性化する転職市場についてお伝えします。

■「社内登用は難しい」とする企業が女性管理職を採用

14年に政府が成長戦略の一つとして打ち出した「女性活用」。「女性活躍推進法」は16年4月1日に施行されました。この2年ほどの間に、女性が活躍できる組織・社会の実現のためには、長時間労働の抑制や休暇取得、時間や場所に縛られない柔軟なワークスタイルなどの環境整備が欠かせないと、多くの企業が気付くこととなりました。

また、昨年あたりから、「働き方改革」により積極的に取り組む企業も増えています。各社で制度や環境整備が進んでおり、女性にとっては、育児と仕事を両立して働けるチャンスが広がっているといえるでしょう。

今、女性の転職環境はどう変わってきているのでしょうか。

まず顕著なのが、女性管理職の採用ニーズの増加。管理職に占める女性の比率について数値目標が掲げられたのを受け、大手~中堅企業ではまず自社内の女性社員を管理職に引き上げる道を探りました。ところが、さまざまなしがらみにより、「他の社員たちが納得する人物を起用することが難しい」という判断に至るのです。そこで、外部から中途採用した女性を管理職に据えようとする企業が多数見られます。

こうした求人では、管理職経験がある女性はもちろんのこと、これまで管理職に就いた経験がない女性、あるいは「主任」「係長」などの肩書はあるものの「スペシャリスト」的な位置づけにあり、部下のマネジメント経験がほとんどない女性でも対象となっています。つまり、転職を機にマネジメントの経験を積むチャンスがあるというわけです。

 

もちろん、入社していきなり「マネジャー」に据えられるわけではなく、「チームリーダー」などとして少数のメンバーのマネジメントからスタートしてほしい、という求人もあります。

■注目のマネジメント手法で女性の強みを生かす

ただ、私から転職希望者の方にこうした「未経験からのマネジャー」の求人案件をご提案すると、「私にはマネジャーなんて務まらないのでは」と尻込みする女性が多いのが実情です。ところが、思い切ってマネジメント職に挑戦してみると、「意外と自分に向いている」「メンバーの成長を支援するのはやりがいが大きい」という声が多く聞かれます。

実のところ、女性は「マネジメント」に向いているのです。特に近年主流となっているマネジメントスタイルは、女性の特性を生かせると感じます。一昔前は「俺の背中を見てついてこい」というタイプのマネジャーが多くいました。強力なリーダーシップにより、メンバーを指導、統率していくスタイルです。しかし今の時代の若手には、その手法では通用しないという見方が強くなっています。

代わって注目されているのが「サーバント型」のマネジメント。これは、米国のロバート・K・グリーンリーフ博士が提唱した「奉仕こそがリーダーシップの本質である」という概念によるものです。メンバーに対して組織が目指す目標やビジョンを示し、メンバーがそれを実行するにあたって「奉仕」や「支援」をするのがリーダーの役割という考え方です。

若いメンバーが主体性を持って、モチベーション高く働けるようにするには、こうしたマネジメントスタイルが有効であるという考えが広がっています。実際、マネジャーを採用する企業からは、「サーバント型マネジメントを実践できる人がほしい」という相談を受けることも増えてきました。こうした「奉仕」「支援」のマネジメントスタイルは、まさに女性にフィットしているのです。

育児との両立の面では、「マネジャーという立場の方が働きやすい」という声も多い。写真はイメージ=PIXTA

育児と仕事の両立を図る女性たちからは、「マネジャーという立場の方が働きやすい」という声も多く聞かれます。というのも、スケジュールを自分の都合に応じてコントロールしやすいから。

保育園への送り迎えが必要な時期は、働ける時間に制約があるもの。しかし、1プレーヤーの立場だと、同僚メンバーや取引先の都合に合わせざるを得ない場面が多くあります。その点、マネジャーであれば、「夕方以降は打ち合わせや会議を入れない」「実行はメンバーに任せ、戦略を練る業務に集中する」など、時間に融通が利く働き方ができるというわけです。

■若手女性が多いベンチャー企業で「ロールモデル」に

伸び盛りの中小ベンチャーでも、女性活用に意欲的です。特に、女性をターゲットとした商品・サービスを展開する企業、人材不足が深刻な業界などは女性の力を生かしたいと考えており、優秀な女性の採用が課題となっています。

また、設立から5~10年程度以上の企業では、新卒採用した女性メンバーが結婚・出産適齢期を迎えています。新規採用のためにも、即戦力の女性たちの力を生かし続けるためにも、企業サイドは育児と仕事の両立支援制度を設けるなど、女性が働きやすい環境整備に取り組んでいます。

それと同時に、若手女性の「ロールモデル」となる存在を求めています。つまり、20歳代の女性メンバーが自身の将来像をイメージする際に、「こんなふうに働いていたい」「こんな女性になりたい」と目標にできるような存在を社内に置きたいということです。ロールモデルとしてだけでなく、女性メンバーが壁にぶつかったときなどに相談相手となり、解決の手助けをする「メンター」の役割を果たしてくれることも期待しています。

こうしたニーズの場合、採用ターゲットとなるのは主に30歳代~40歳代半ばで、2~3年以上の管理職経験と育児経験を持つ女性です。

■生活者としての女性目線が生きる求人が増加

女性を優先して採用したいとする求人は、管理職に限らず増えています。特に、女性ならではの「生活者目線」が生かせる業種では、女性の採用に意欲的です。

例えば、以下の業種です。

●住宅 ●食 ●生命保険 ●保育サービス ●教育 ●家事代行サービス ●介護サービス ●医療サービス

保育・福祉・医療といった業種でも、「保育士」「介護福祉士」「看護師」といった専門資格は必要とされません。資格や実務経験がなくても、企画、マーケティング、セールスプロモーション、営業、施設運営マネジメントなどのポジションで採用されるケースが多々あります。

■男性中心だった業界が女性採用を強化

不動産・住宅業界では女性の「生活者」目線が期待されている。写真はイメージ=PIXTA

これまでは男性が中心だった業界で、女性を積極採用するケースも見られます。その代表が不動産・住宅業界です。不動産賃貸・売買の仲介営業、住宅リフォームの提案営業などの職種で、女性の採用事例が増えています。

住まいに関しては、「生活者」としての目線や家事の経験を生かし、顧客にきめ細かなアドバイスや提案ができるのが女性の強みです。実際、不動産営業職では女性が高い業績を上げるケースが多く、企業側も「女性をもっと活用すべきだ」という意識が強くなっています。

これまで不動産業界で女性が長く仕事を続けるのが難しかった要因として、土日が休みではなかったことも挙げられます。そこで、「土日休みの勤務体系を設ける」「チームでローテーションを組み、個人の勤務スケジュールに融通を利かせる」など、制度を刷新する企業も見られます。

こうした動きは、これからもさまざまな分野に広がっていくのではないでしょうか。女性の皆さんには、ご自身が想像する以上に可能性が広がっていることを、ぜひ認識していただきたいと思います。