AI企業と社員の「すれ違い」をAIが防ぐ! 転職可能性判定から不満や不調の察知まで
転職は面倒なもの。でも、もしある日突然、今より条件がよく、興味ある分野で、さらにキャリアアップもできる仕事のスカウトメールが来たら──。心は動いてしまうに違いない。
【scouty(スカウティ)が提供する「AIヘッドハンティングサービス」】
人手不足が年々深刻化するなか、ITの力を使って企業と人とをマッチングし、人材の有効活用をめざす「HR(ヒューマンリソース=人的資源)テック」に注目が集まっている。
scouty(スカウティ)が提供するエンジニア向けの「AIヘッドハンティングサービス」は、冒頭の夢のような転職を実現した。AIがSNS投稿などインターネットのさまざまな情報を収集し、プログラミングのスキルや、興味のある分野のキーワードなどを記載した人材データベースを作成。この情報を元に、企業の人事部は、必要な能力を持つ人材にアプローチできる。エンジニア側は、転職サービスに登録していなくても、能力に合ったオファーが来るというものだ。
「今の就職や転職活動のシステムがあまり好きじゃない。ミスマッチが生まれやすい仕組みだと思うんです」
そう語るスカウティ代表取締役の島田寛基さん。起業の原体験は、友人の就活に疑問を抱いたことだ。京都大学卒業後、英エディンバラ大学院に留学。日本では、友人たちが就活の真っただ中。しかし、優秀な友人ほど能力に見合った就職をしていないのでは……。
広告会社に入社した、デザインが得意な友人も、能力を生かせないままに、毎日終電まで仕事に追われていた。「修業だと思って、3年は続けるよ」。疲れた顔でそう語る友人の言葉に、どうも納得がいかなかった。
「もし能力に合ったスカウトが来ていたら、状況は違ったはずです」
この仕組みは、採用側にとってもメリットが大きい。DODAが発表した2017年11月の転職求人倍率によれば、全体の2.46倍に対して、技術系(IT・通信)は8.17倍と、人材確保は難しい。
一方、スカウティのデータベースには、メールアドレスが判明しているケースに限っても約3万5千人の情報がある。さらに、SNSでの「辞めたい」といったつぶやきや、在職する会社の平均勤続年数などからAIが予測した「転職可能性」も表示される。人事担当者は、「具体的に活動はしていないけれど、転職したい」という潜在層に、効率的にオファーできる。
企業と社員とのミスマッチは採用段階だけでなく、入社後も課題だ。ネオキャリアが人事向けに展開するクラウド人事管理サービス「jinjer(ジンジャー)」では、社員の「笑顔」からストレス度合いを判定できる仕組みを導入。不満や不調を早期に察知し、離職に至る前に対応できる。
「出勤」「退勤」の際、タイムカードを押すように、タブレットやスマートフォンに笑顔で写ってもらう顔認証で記録する。この画像をAIが、2万人の笑顔データを参照して100点満点で点数化。勤務状態などのデータと掛け合わせ、従業員のストレス度合いを7段階で判定し、人事担当者に通知してくれる。
例えば、「ずっと笑顔点数が高かったのに急に下がった」という場合などで早期に面談などの対策が打てる。
もともと採用や転職支援がメイン事業だった。
「『採用して終わり』ではなく、その後もフォローできるような仕組みをつくりたかった」
と、開発を担当した小口敦士さんは言う。
ここ30年以上変わらず、新卒の3割は3年以内に辞めていく。企業と社員の長引く「すれ違い」にピリオドを打つのは、AIかもしれない。(編集部・市岡ひかり)