副業はみんながするものではない

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国語が嫌いで文章を書くことも苦手な自分。小学校の時は5段階評価の「2」である。2013年10月に、サイボウズとダンクソフトという2つの会社に同時転職をし、さまざまな副業をへて5年目。この間に本当に多くのメディアに「副業」を取材された。

中村龍太(複業家・ポートフォリオワーカー) 1964年広島県生まれ。大学卒業後、1986年に日本電気入社。1997年マイクロソフトに転職し、いくつもの新規事業の立ち上げに従事。2013 年、サイボウズとダンクソフトに同時に転職、複業を開始。さらに、2015 年には NKアグリの提携社員として就農。現在は、サイボウズ、NKアグリ、コラボワークのポートフォリオワーカー。2016年「働き方改革に関する総理と現場との意見交換会」で副業の実態を説明した複業のエバンジェリストとして活躍中。

僕にとっての「副業」とは

「農家x IT企業」という、ナンチャッテ農業をしていたご縁でお友達になった農業ジャーナリストの窪田新之助さんと、今年8月にパエリアを一緒に食べている時にふと、「副業について本を出してみたいんだよね」と言ったことがきっかけで、Wedgeさんを紹介された。そもそも自分で書くことは想定していなかったのに、今、こうしてタイピングをしている。うまく書けるのか、不安にもなるが、Wedgeさんは「大丈夫ですよ」と言う。本当か?

そもそも、本を出してみたかった理由ってなんだったろうか。「なんかカッコいいかも」、「自分が経験したことを伝えたい」、「友達も出しているし」、そんな感じだ。たいした理由ではない。でも、なんかつぶやいている自分がいて、このような出会いがある。ただ、Wedgeさんに怒られそうだが、正直、たいした金額ではない。

昔の僕だったら、「お断りします」と言っていたかもしれない。こんな生意気なことを言っていると、Wedgeさんから、「やっぱり、記事になりません」と言われるかもしれないが、そこはどう自分を納得させるか……やっぱり実力、スキルがなかったのね、で良いと思う自分。ここに「書いて欲しいという人」がいる、そしてその機会を自分がどう選択するか、もし、うまくいかなかったとしても、失うものがなければ、または、小さければ、やりたいという意識の方が高ければ、まずはやってみる。それが、僕の副業のようだ。

以前の僕が「副業」をしなかった理由

では、2013年より以前、なぜ、僕は副業をしなかったのだろうか。そもそも2つの会社に転職する前は、マイクロソフトという外資系の会社。辞める直前は営業職をしており、外資系によくある毎年倍々ゲームの高い目標を与えられ、それを達成することに邁進していた。他のことを考えさせるような隙を与えられず、まっしぐらに、会社に与えられたやるべきことをこなす日々。読者の中のサラリーマンのみなさんは、どうだろう。高い目標かどうかは別として、やるべきことに注力し、失敗は許されず、出来て当たり前。そのような会社は結構あるはずだ。

話を戻すが、僕はなぜ高い目標を達成するために、めちゃくちゃ頑張って働いていたのだろうか? 「子供の教育費が必要だから」、「家のローンを払わないといけないから」、「将来が不安だから」。とにかくお金のために働いていた。会社で自分の居場所を見つけるために、つらい仕事も受け入れた。その仕事が成長を促すと後で意味づけする自分がいた。実際に成長したところもありそれはそれで否定はしないが……それはまるでノミの実験のようだ。

ノミの実験とは、何か? ノミの実験をご存じない方に説明しよう。ノミは通常2mの高さまでジャンプするらしい。しかし30cmの高さの箱を被せるとどうなるか? ノミは最初、天井にぶつかっても2mの高さを飛ぼうと努力するが、何度挑戦しても30cmしか飛べないと30cmしか飛ばなくなるそうだ。すると、箱を外して高く飛べるようにしても、もう30cmしか飛べない。

まさに、会社が箱のようなもの。そこでモヤモヤせず生きていけるのであれば、それは、それで良いと。しかし、僕の場合は違っていた。だいたい、死ぬまでマイクロソフトに働けるとは思っていない。なぜなら、毎年、高い目標を達成する体力が続かない。体力があったとしても、本部長、ジェネラルマネージャーなどの出世に興味がない。何か自分の成長を意味づけることがあるかもしれないが、マイクロソフトの中で働き続けることには、そうとうモヤモヤした将来があるように思えていた。

すべての人に「副業」はいらない

このサイトを見ている読者のサラリーマンはどうだろう。会社の上役に役割をもらいそれを担っていく。役割をこなし上役から評価され、褒められ、金銭が支払われる。一応、給与テーブルがあり、「君はここだよ」、「今度はここを目指そう」と言われ、真面目な日本人は素直に挑戦する。悪いことではない。給与テーブルはあるものの、結局、上役との相性で評価が決まるケースも多い。それでも日本人は器用なので、我慢して、学んでこなしていく。

oatawa/iStock

今年、ある大手企業で「働き方改革」を考えるワークショップを受け持った。グループに分かれて、自分自身の「働き方」の理想を議論した。そこで40代の社員がこんな発表をした。「えーと、私の理想は、現実にはできていない、奥さんや子供と一緒に夕食を食べることです」。そのためのアクションは、「18時に必ず退社する」、「退社を忘れてしまうことがあるので、息子から携帯に電話してもらう」、「そうすれば、理想を達成できる」という素敵な発表…と思いきや、「実は、会社から辞令をもらい、来月から海外単身赴任です」と、すごくうれしそうな顔で宣言した。さっきまで発表していた理想はなんだったのか? 現実には、なんの問題もなく、「I LOVE カイシャ」が存在する。

僕は「本業」だけでモヤモヤせずに働ける機会があれば、それはそれで幸せだと思う。僕もそうだったから。すべての人に「副業」はいらない。