AI採用現場で「AI面接官」は普及するのか
ソフトバンクがエントリーシート(ES)選考にAIを活用するなど、採用業務の自動化が着々と進んでいる――。実は、こうした動きはESだけでなく「人がやるもの」と考えられてきた面接業務にも及んでいる。AI面接官「SHaiN」(シャイン)を開発したタレントアンドアセスメントの山崎社長に話を聞いた。
最近、採用業務のデジタル化が急速に進んでいる。例えば、ソフトバンクは2017年5月、新卒採用のエントリーシート(ES)の評価に米IBMのAI(人工知能)「Watson(ワトソン)」を活用すると発表した。
過去のES選考のデータを学習したワトソンが合否判定をしており、これまでES処理に掛かっていた時間を75%も削減したという。
実は、こうした採用の効率化の動きはESだけでなく、「面接」にも及んでいる。採用支援事業を展開するタレントアンドアセスメントは今年8月、AIを活用した採用面接サービス「SHaiN」(シャイン)リリースした。
スマートフォンやソフトバンクの人型ロボット「Pepper」を通じて面接を自動で行うことができ、受験者の資質を分析してくれるという。「リリース直後から大手企業や行政(市役所)などから引き合いがくるなど、滑り出しは好調」(同社)のようだ。
着々と進む採用業務の自動化――。「人がやるもの」と考えられてきた面接業務もAIが担う時代が来るのだろうか。タレントアンドアセスメントの山崎俊明社長(以下、敬称略)に「AI面接」のメリットやニーズについて話を聞いた。
受験者をより細かく分析できる
――人の代わりに面接をするサービス、「シャイン」について教えてください。
山崎: 受験者の母数が最も多い「1次面接」を、音声認識機能を持ったシャインが代わりに面接して、評価をしてくれます。当社ではもともと、人物の資質を評価するための仕組みを顧客に提供してました。質問への回答内容から、受験者がどのような資質を持っているのかを分析する面接マニュアルのようなものです。そのメソッドを今回のサービスに応用しています。
――具体的には、どのようにして面接を行うのですか?
山崎: 受験者は場所を気にせずにスマートフォンやタブレットなどで受験をすることができます。また、ソフトバンクの人型ロボット「Pepper」にも対応しているので、企業で筆記試験などを受けた後に、Pepperに面接を任せるといった運用も可能です。
音声で読み上げられた質問に対して受験者が口頭で回答し、面接を進めていただけます。
答え方が抽象的で具体的ではないときも、人と同じように回答の趣旨を理解するまで掘り下げて質問してくれるのが特徴です。
例えば、「学生時代に最も努力した経験は何ですか?」という質問に対し、受験者が「アルバイトです」と答えると、「何のアルバイトですか?」「どのように努力したのですか?」と、具体的な回答になるまで自動的に掘り下げていきます。質問は100通り以上用意していますが、次の質問に移るべきかどうかも自ら判断し、受験者の資質を見抜くまでしっかり面接をしてくれます。
評価については、「自主独立性」「バイタリティー」「柔軟性」「ストレス耐性」など、11項目の資質を分析します。応募者が多く、面接時間をあまり確保できない企業の場合、ここまで多角的に分析することはできません。しかし、シャインを使えば時間を気にせずじっくりと質問ができます(最大90分間)。「ヒアリング」を自動化することで、企業は受験者をより細かく分析することができ、同時に採用業務を劇的に効率化できるようになるわけです。

受験者にもメリットがある
――しかし、面接を機械に任せてしまうと受験者の雰囲気や、いわゆるコミュニケーション力などが判断できないのではないでしょうか。
山崎: 実は、カメラによる映像分析も加えておりますので、その心配はありません。端末のカメラで面接の開始時と終了時の表情を撮影するほか、面接中にもランダムで撮影し、表情や態度の変化を記録しています。
また、コミュニケーション力というのは、いかに饒舌(じょうぜつ)に話せているかというよりも、きちんと会話のキャッチボールができているのかということです。
ですからシャインの質問に対して、的確に答えられているのかを分析することで、表現力、理解力、コミュニケーション力などを判断することができます。
――受験者としては、やはり人に面接して判断してもらいたいのではないでしょうか。
山崎: 意外かもしれませんが、今夏に朝日新聞が実施した調査で、人が行う面接よりも、判断基準が統一されたAI面接の方が好感が持てるという結果も出ています。人の場合、どうしても属人的な判断に頼らざるを得ない部分があります。面接を受ける順番などで印象も異なりますし、誰が面接官になるのかによっても結果が変わってしまうからです。
機械であれば、そうしたいわゆる“運”に左右されません。公平な判断をしてくれるという点で、受験者もメリットを感じています。
また、受験者も好きな場所、タイミングで受験ができるので、就職活動を効率よく進められますし、交通費も掛かりません。結果として、より多くの企業を受けることが可能になります。
企業としても、面接のシステム化は喫緊の課題です。1次面接で聞いたことを2次面接でも聞いていたり、逆に聞き漏らしてしまうなど、これまでの面接はシステム化されてないが故に非効率でした。質問自体が統一されていないようなケースもあります。
また最近では、圧迫面接をしてしまったために「ブラック企業」という印象を世間に広めてしまい、評判を自ら下げてしまうケースも出てきています。属人的なやり方では、面接自体がリスクにもなってしまうのです。
こうした現状を重要課題と捉え、シムテム化していこうと考える企業は少しずつ増えています。具体的な数字はお答えできませんが、中堅・大手企業だけでなく、最近は行政(市役所)からも導入したいとの声をいただいています。
昔よりも「選び抜く力」が求められるようになった理由
――ESの選考をAIで効率化するなど、選考プロセスを効率化する事例が増えてきました。その背景は何でしょうか。
山崎: 昔と比べて「選び抜く力」が重要視されるようになってきたからです。
これまでは主に、「受験者を集める」「入社させる」という2つが人事業務において評価されており、選び抜く力はあまり重視されていませんでした。昔は、今のように学生全員が希望する企業を自由にエントリーすることができなかったので、そもそも受験者の母数が少なかったからです。
企業は「応募用はがき」を希望の大学だけに送り、その中から内定者を選んでいました。しかし今は、「リクナビ」「マイナビ」などの求人サイトで誰でも簡単にエントリーができます。ダイバシティー(多様性)の流れもあり、企業側も広範囲(さまざまな大学)から学生を採用することが求められています。受験者の母数がかなり増えたわけですから、企業側の、選び抜く力が求められてくる。
最近よく「優秀な学生がいない」という声を企業から聞きますが、それは昔より優秀な学生が減ったのではなく、受験者の母数が多すぎるために、見つけるのが困難になっているからです。
また、面接官の人数には限りがあります。特に人気企業の場合、大量の受験者を面接するわけですから、1人当たりの面接時間は限られてしまいます。しかし、短い時間の面接では、受験者の資質を見抜くことはできませんし、それで合否を決めてしまうのは受験者にとっても不本意ですよね。こうした課題を解決するために、採用業務の自動化が重視されるようになってきたということです。
さらに、コスト(人件費)をできるだけ抑えて生産性を高めなければいけません。受験者が1~2万人を超えるような企業の場合、面接スタッフを1000人ほど投入していますが、面接をしている時間は本来やるべき仕事もストップしてしまいますので、大きなコストが掛かっています。
――面接の自動化を進めることで、採用担当者はどのような業務により注力できるようになるのでしょうか。
山崎: 煩雑だった業務から解放されることで採用担当者は入社してほしい人を「口説く」ことに時間を使えるようになります。自社の魅力を伝えていくことはAIやロボットには任せられません。受験者とコミュニケーションをとり、入社の動機付けをしていくことが、人事の重要な役割になっていくでしょう。


