面接、採用…人事部の仕事は「人工知能」でこんなに変わってしまう 新規採用から業務評価まで

AI面接、採用…人事部の仕事は「人工知能」でこんなに変わってしまう 新規採用から業務評価まで

日本を含む世界各国の企業で、AI(人工知能)が人事部の各種業務に導入されつつある。たとえば新規社員の採用や既存従業員の人事考課などに、AIは効果的と見られている。

人事部がAIを導入する主な狙いは、採用面接や業務評価における「人間ならではのバイアス(偏見)」を取り除き、より客観的なデータに基づく評価へと切り替えることにある。いわゆる「機械学習」や「パターン認識」など、最近のAIが得意とするデータ解析能力を使って、既存社員や入社志願者の各種能力、あるいは当該業務に対する適性等を正確に把握しようとする試みである。

だが、そこにはAI、あるいはコンピュータならではの新たな問題も指摘されており、今後、より本格的な普及に向けて慎重な運用が求められている。

第1段階:履歴書のスクリーニング

おそらく、人事業務へのAI導入が世界で最も進んでいるのは米国であろう。米国では人材の採用活動や入社後のパフォーマンス評価などに、AIが使われるのは今や珍しいことではない。

米国の企業には常時、多数の入社志願者から「レジュメ(別名CV:Curriculum Vitaeとも呼ばれる職務経歴書)」が大量に送られてくる。従来は(採用面接に進む前段階としての)これら膨大な書類審査を、当然ながら人事担当者(つまり人間)が行っていたわけだが、最近は、これをAIに任せるケースが増えている。

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たとえば独SAP社が提供する「Resume Matching」というAIソフトを使うと、募集中の職種に対して送られてきた多数のレジュメを、応募者の能力・適性順にランク付けしてくれる。

その際、人事部の担当者はあらかじめResume Matchingに(過去に送られてきた)大量のレジュメを(匿名化したうえで)読み込ませておく。それらのレジュメには各々、入社希望者の職務経歴と共に、その人が書類審査をパスしたか否か、また(パスした場合には)その後の面接を経て採用されたか否か等の結果データが付加されている。

Resume Matchingはこれら大量のデータを機械学習することにより、どのような記述内容のレジュメが特定の職種における採用審査をパスしやすいか、つまり特定の職種に適した職務経歴(=スキル)のパターンを割り出す。

このように機械学習を終えたResume Matchingに、人事担当者は本番データ、つまり現在募集中の職種に対して入社志願者から送られてきた大量のレジュメを入力する。すると、このAIソフトは事前に割り出されたパターンに基づき、実際の入社志願者のレジュメを並べ替えていくのだ。

これにより、従来なら(たとえば)数百人、数千人にも上る応募者全員のレジュメを人事担当者が書類審査しなければならなかったところを、AIソフトがランク付けしたレジュメのうち(たとえば)上位数十人だけをピックアップして書類審査すれば済むようになった。

つまりAIによるスクリーニングによって、大幅な省力化と時間の節約が実現されたのだ。

第2段階:採用面接

こうした書類審査を経て、いよいよ採用面接へと進むわけだが、最近はこのプロセスをもAIで自動化する動きが目立つ。

たとえば「Interviewed」というAIシステムを使うと、インターネット、あるいは電話を介してAIが(入社希望者を相手にした)採用面接を行ってくれる。

具体的には「仕事中、上司と意見が食い違った場合、貴方なら、どう対処しますか?」といった質問をAIが幾つか投げかけ、これに対し入社希望者が自分の答えをパソコンの画面、あるいは電話を介してAIに伝える。

このAIもまた(前述のResume Matching同様)すでに機械学習を終えており、ここから割り出されたパターンに基づいて、この人がこの会社の企業文化や各種業務に適しているか否かを判定する。その際、「自然言語処理」と呼ばれるAI技術が使われ、特定の言葉に対する嗜好やその使い方などから、ある職種に対する、その人(入社希望者)の適性なども推し量られる。

たとえば非常に丁寧で礼儀正しい言葉遣いを頻繁にする人であれば、「この人はカスタマー・サポートなど、普段から顧客と接する職種に適した人材である」などと判定する。

さらにビデオ撮影した採用面接の様子をAIが判定するケースも存在する。たとえば「HireVue」というシステムでは、入社志願者がスマホやパソコンからインターネットを介してビデオ面接に臨むが、その相手はAIである。

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このAI面接官は、一般的な採用面接で使われる典型的な質問(たとえば「あなたの長所、短所は何ですか?」など)を入社志願者に次々と投げかける。これに対する返答を、AIは(例によって機械学習やパターン認識に基づいて)事細かに分析する。

たとえば、この入社志願者が(ビデオ面接の際に)どんな言葉を好んで使うか。あるいは声の抑揚、さらには表情や仕草なども分析し、特定の職種に対する志願者の適性を、その能力面から感情の起伏、精神的な強さに至るまで総合的に判定する。

ただし、これらの面接用AIはあくまでスクリーニングに利用されるに過ぎない。つまり多数の入社志願者の中から、まずはAIを使って候補を何名かに絞り込む。彼らに対して後日、人事担当者(人間)が通常の採用面接を行うことにより、最終的にその採否が決定されるのだ。

第3段階:入社後の業務評価

以上のような選考プロセスを経て、めでたく入社すると、今度は彼ら従業員(社員)のパフォーマンスを定量的に測定(評価)するAIが待ち受けている。

たとえば「Veriato」というソフトは、従業員たちが普段、業務用パソコンを使って何をしているか、その全ログを蓄積して詳細に分析する。分析対象には「ウエブ・ブラウザによる閲覧履歴」「メールやチャットの中身」「キーボード入力の記録」「閲覧・編集した文書」、さらには「各種アプリの使用履歴」など、広範囲のデータが含まれる。

これだけであれば、いわゆる「社員監視ソフト」の一種ともみなされるが、Veriatoでは社員全員のログをAIが解析することにより、この会社の業務遂行に必要とされるベースライン(基礎能力)を算出する。これを各社員のパフォーマンスと比較することにより、個々の社員が各種業務において、どの程度、ベースラインを上回る、あるいは下回っているか等を判定する。

VeriatoのようなAIはまた、機械学習とパターン認識に基づく異常検知機能を備えているため、従業員による情報漏洩や逸脱行為などを早期発見できるとされる。

また彼らがやり取りするメールの内容をAIで解析することにより、普段の仕事や上司、同僚らに対する不満などをいち早く検知し、彼らが近々退社したり、情報を社外に漏洩したりする危険性(確率)なども算出する。

注意点:評価プロセスがブラックボックス

ただし、この種のAIはいわゆる「ブラックボックス化」と呼ばれる問題も抱えている。AI内部の仕組みが外部からは見えないブラックボックスであるため、AIが各社員に下した評価、あるいは彼らが何らかの過ちや悪事を犯す危険性などは算出されても、なぜそのように評価あるいは判定したのか、その理由をAIは人間に教えてくれない。

つまり個々の従業員は、単なるパターン認識に基づく評価結果や予想を受け入れるしかない。これは(既に入社した)従業員の業務評価のみならず、それに先立つ採用プロセスについても共通する現象だ。仮に、こうしたAIが今後、日本でも人事の現場へと闇雲に導入された場合、それはビジネス社会全体に深刻なモラル・ハザードを引き起こす恐れがある。

企業の人事部、あるいは各業務の現場で人事考課に当たる管理職の人たちは「AIはあくまでも(人材評価用の)ツールに過ぎない」という意識を念頭に置いたうえで、そうしたAIで節約された時間や労力を有効に使って、より正確・公平な人材採用や人事考課を心がける必要があるだろう。