女性雇用女性活躍推進にロールモデル論はいらない アクセンチュアと東京ワーキングママ大学が男女賃金格差解消を目指す
女性活躍推進法の施行を受け、女性労働力に対する期待は高まる一方であるが、当の女性の意識に大きな変化は生じているように見受けられない。「人事制度を見直せば、女性は喜んで活躍してくれるに違いない」と、性善説で楽観的に捉えている企業に対し、家庭と仕事を天秤にかけながら自分の価値を冷静に見定めている女性の間には、深い溝が横たわっているのではないだろうか。
こうしたギャップを埋めるべく、企業側と女性側の双方に働きかけながら、時短ママが管理職を目指せる環境づくりに取り組む働き方改革プロジェクトがある。東京ワーキングママ大学とアクセンチュアのコラボレーションで生まれた「Work Smarter!」だ。子育てなどで時間に制約がある女性が活躍できる社会に足りないものは、いったい何なのだろうか。一般社団法人日本ワーキングママ協会 代表理事 大洲早生李氏とアクセンチュア 通信・メディア・ハイテク本部 シニア・マネージャーの井上彩氏(以下、敬称略)に話を聞いた。
女性が管理職を目指せる環境づくりを
──Work Smarter!を始めた時期と経緯について、教えてください。
大洲 2015年の春から構想を始め、同年10月にキックオフイベントを開催しました。
井上 男女の賃金格差の解消に向けて、性別や制約にかかわらず能力に応じた対価を得られる社会を作っていきたいという共通の課題認識があったので、もっとスマートに仕事することを意識した働き方改革プロジェクトを始めました。
アクセンチュアとしては社会貢献活動として、東京ワーキングママ大学(以下、WMUT)の想いを具現化するためのアドバイザリーとして入ることで、本業で活躍している人事戦略やデジタルマーケティングなどの専門家集団がWMUTのメンバーと一緒にプロジェクトを進めています。
──WMUTでは普段どのような活動をされているのですか?
大洲 子連れで行けるビジネススクールということで、ワーキングマザーがキャリアアップするためのコンテンツをセミナーという形で提供しています。キャリア・ライフ・子育ての3つのカテゴリがあり、6割がキャリア、残り2割ずつがライフと子育てという構成ですね。単発のオープンカレッジとロングスパンの3カ月コースがあり、キャリア志向の高いワーキングマザーが参加しています。

──Work Smarter!のターゲットやゴールは、どこにありますか?
大洲 プロジェクトの立ち上げ当初に考えていたターゲットは“離職してしまった主婦”で、彼女たちの就業支援をしようと考えていたのですが、1回やめてしまった方たちに自信を取り戻してもらい、パートタイムで肩慣らしをしてから、フルタイムで本格的に復帰してもらうというストーリーはあまりにもハードルが高すぎて。かと言って、一足飛びでいきなりフルタイムで戻りましょうと言っても、まだその環境が日本では整っていません。
そこで、まずは復職しやすい環境を作るためにも、“企業で働きながら管理職を目指している女性”にフォーカスすることにしました。管理職になるかどうかで、賃金の男女差は大きく開いていきますので。今は、管理職を目指すワーキングマザーを中心に、管理職になるにあたって必要な仕事の効率化のスキルを教えたり、人に任せるマネジメントの概念を身につけられるような講座を用意しているところです。

井上 講座を通じたワーキングマザー本人のスキルアップもありますが、周りの企業に向けた取り組みも大切だと考えています。企業で女性活躍推進を行っていたとしても、それが本当に女性社員の方々の悩みを解決できるものになっているのかどうかは、なかなか見えていないのではないかと思うんですね。なんとなく「女性ってこんな感じだよね」と話していても、埒があきません。
ワーキングマザーがどんなことに悩み、管理職になるにあたってどんな悩みを抱えているのか。女性の声をデータとして明らかにすることで、企業としてどんなサポートをすべきなのかも見えてくるはずなので、女性の声を集めたオープンナレッジプラットフォームを作る取り組みも並行して行っています。
──そもそも企業としては、女性の管理職を増やしたいと考えているのですか?
井上 そうですね。女性活躍推進法で301人以上の企業に対する義務づけがありますし、女性の活躍推進に向けた行動計画の提出率が100%に近い割合になっていたので、企業として何かしらの行動を起こそうとしているのは間違いないと思います。ただ、それにワーキングマザーがついて行っているかというと、疑問が残りますが。
女性活躍を阻むのは女性自身の思い込み
──女性の管理職が増えない原因は、どこにあると思いますか?
井上 アクセンチュアでは、キャリアカウンセラーとは別に、管理職候補一人ひとりに指導役の管理職がついて、その成長をサポートするスポンサー制度があるのですが、日本企業でそういった話はあまり聞かないので、女性のキャリアデザインについて考える土壌が整っていないのかもしれませんね。
大洲 海外ではメンタープログラムを提供している会社がありますが、日本ではあまり聞きませんよね。女性活躍というと、なぜかロールモデル論のようなわけのわからない定性的なもので語られがちですが、私たちのプロジェクトメンバーの中にはロールモデルが必要だと感じている人が1人もいなかったんです。女性のマインドを変えるために必要なのはロールモデルではなく、もっと別の何かなのではないかと。しかもそれは企業のステージや規模、業種などによって傾向が違うのかもしれません。
なぜ私たちが定量的なエビデンスにこだわるのかというと、女性活躍推進施策の意思決定権は男性にあるために、よくわからないまま“ふわっとした施策”に落ち着くことが多いんです。男性にとっては他人事だから、本気度も高くありませんし。だからこそ、そんな男性に向けたヒントになるような女性の声を集めたファクトデータが必要だと考えています。

