女性雇用ママ社員だって会社から求められる人材になりたい!
1998年に現社長の藤田晋さんが設立したIT企業、サイバーエージェント(東京都渋谷区)。「内定後に出産した新卒ママ、活躍の秘密は『発信』」では、新卒入社ママ第一号となった蒼山桜子さんの事例を紹介しました。取締役人事本部長、曽山哲人さんの記事に引き続き、今回は人事本部・シニアマネジャーであるママ社員・松林美佳さんに話を聞きました。
「社内で交際するなら、結婚すること」
人事本部・シニアマネジャーの松林美佳さんは、新卒入社第3期の2002年に入社した。入社後、配属されたのは新規事業の立ち上げ部署の営業職。それまで広告代理業を専業としていたサイバーエージェントが自社メディアを立ち上げようという時期で、その部隊の販売セクションに約1年半在籍した。
その後、物販に代表されるeコマース関連の新規事業部に2年。そして、その部署が「Ameba」の部署と合併した後は、マーケティング、広報、アライアンスに関する企業提携など、一人で何役をもこなす毎日を送った。
Amebaの周辺事業が子会社化されることになり、プロダクトマネジャーとして商品設計から売り上げまでを管理して約3年経験を積み、仕事で大きな成果を出すことができ、一区切りできたタイミングでそれまで約8年間交際していた同僚と結婚した。
社内恋愛には寛容な会社のようだ。
「社内恋愛は禁止されてはいませんが、『交際するなら、結婚すること』という暗黙のルールはあります(笑)」(松林さん)
復帰後は働き方に融通の利く専門職を志願
29歳で結婚して翌年ママになった。もとから仕事は続けていきたいと考えていたため、育児休暇制度を利用した。
復帰後はマネジメント職ではなく、働き方に融通の利く専門職としての仕事を選び、当時注目され始めていたゲーム事業部でのデータ分析官を志願。その部署に務めて2年目に差し掛かったころ、「あした会議」と呼ばれる経営会議で「社内の適材適所化」プロジェクトが遂行されることが決まり、人事部に異動になった。そして今、人事に配属されてから1年半が経ったところだ。
現在フルタイムで勤務中で、9時に出社して18~19時頃に帰宅する日々。注力しているのは、将来の経営幹部にふさわしい人材を戦略的に育成する、タレントマネジメント・プロジェクトだ。
「当社は全社員が2800人を超える規模になり、毎年200人ペースで新卒社員が入社してきます。社内の適材適所化がミッションです。そのために、社員それぞれの得意なことや目標を可視化できるデータベースを作成し、全社員で共有することを目指しています」(※編集部注:このプロジェクトを機動的に立ち上げたことで松林さんは2013年に全社員総会のベスト賞を受賞している)
ママとして特別扱いされることがない それが働きやすさにつながる
「働きやすさと仕事環境について、ママの視点からはどうか?」と尋ねると、「今はストレスなく全力で仕事に向き合えています」という答えが返ってきた。
「復帰後は専門職を選択したことで、『挑戦と安心』がセットになった仕事に就くことができました。ママ視点といっても、実は、母親であることを意識することはあまりないですね。ママとして特別扱いされることがありませんから。それが働きやすさにもつながっていると感じます。今、仕事に集中できているのは、娘が成長して(4歳)手が掛からなくなってきたおかげもあります」
自分に向き合って吹っ切れた、「もっと仕事がしたい」
でも、仕事で思い掛けず負荷が掛かって「しんどい、もうダメかも……」と思う時期もあったそうだ。
「娘が1歳の頃です。娘がすぐ熱を出したりして、ママ社員としてどう働いていいか戸惑ったことも……。自分なりに仕事を頑張っているけれど、気持ちの上で地に足がついていなかったというか……、何となくフラフラした状態が続いていた時期がありました」
その状況から抜け出すために、3日間掛けて自分と正面から向き合ったそうだ。
「その結果、『もっと仕事をしたい、組織からもっと求められる人材になりたい』という、自分の本当の気持ちに気づいたんです」
「育休後は以前と比べると明らかにジョブサイズが小さくなっていたものの、『子どもがまだ小さいし、このくらいで満足しよう』と、本心を抑圧していたんです」
「心の中に抱え込んでいた感情や、自分がやりたいことを書き出したりして、ごまかさずにトコトン向き合ったことで肝が据わったというか……、吹っ切れました(笑)」
自分の中での気付きを、周りの人にもきちんと発信した。月に一度の上司との面談で「ゲームの分析官になってまるごと一社のデータ分析をゼロから取り組んでみたい」と伝えた。
「自分のやりたいことを発信すれば、個人の意志を受け入れてくれる会社であることは間違いありません。時短とフルタイム勤務も選ぶことができ、やる気さえあれば全力で仕事にコミットできる環境であることに感謝しています。夫にももちろん気持ちを伝えたところ、『やってみるといいよ』と賛同してくれました」
人事部への異動は自らの希望ではなく、最初に就いた元上司の推薦がきっかけだった。入社してからのキャリアも長いし、多くの部署や職種を経験してきた業務知識の広さが評価されたのだろう、と言う。
「人事として、社内制度をはじめ、働くママのためにもっと改善したいと思うことや取り組みなどはあるか?」という問いに対しては、「私は妊娠中、つわりがひどかったので、ちょっと横になるためのスペースを社内に増やしたい。匂いに敏感になる特有の時期でもあるので、そういう心配りをみんなができたらいいですね。案外、社内で言えそうで言えないことだったりしますから。母体を守るための配慮をしたいと思っています」という答えが返ってきた。
まるで同志のような夫婦 休日には外食して2時間、会話を楽しむ
お嬢さんは送迎サービスのある無認可保育園に通わせている。夫との家事分担は「100%私です」と明言。
「夫には家事のために仕事の手を緩めてほしくないのでそれでいいと思っています。育児に関してはとても協力的です。週末のどちらか一日は私に一人の時間をくれるのでそれはすごく感謝しています」
自分は基本的には残業せず、限られた時間内で結果を出す。一方で、夫にも育児・家事のために、仕事を我慢してほしくないと考えている。
「休みの日は仕事のメールはチェックせず、オンとオフはしっかり分けて過ごします。週末は家族で食事に出掛け、お酒を飲みながら夫と2時間近く、ゆっくりと本当にいろんな話をします」
同じ会社ということで共通言語も多く、夫婦というより同志という関係に近いそうだ。
一人で過ごすオフタイムは本を読んだり、映画を観たり…。日頃おろそかになりがちなインプットの時間に当てるように心掛けている。エステサロンや美容室などにも行き、「ママだから、と自分磨きができなくなるのは嫌だ」と語る。
最後に、働く後輩ママへのメッセージを聞いた。
「仕事も子育ても悩みが尽きることは絶対にないと思うんです。私も、悩みながら働いています」
「働くスタンスを考えるとき、『第2子もほしいけど、復帰できるかな』『もっと長く働きたいけど大丈夫かな』とか、自分が本当にしたいことをつい先延ばしにしがちです。でも、見通しが立たない先のことをあれこれ考えるのではなく、まず自分のやりたいことを決める。そして、それを実現するためにどうすればいいか逆算していけば答えはみつかりやすい。だから、まずは自分の願望にきちんと向き合ってください、と伝えたいですね」
(次回は、サイバーエージェントが新設した女性社員支援の社内制度を取り上げます。)


