女性雇用女性のキャリア断絶阻止 ソニー、休業中も「在宅勤務」
女性社員の「キャリア断絶」阻止へ――。休業した社員の復帰のあと押しに企業が力を入れている。これまで女性は男性に比べて、働くことに関するグランドデザインを描きにくかった。ソニーは休業中だからと放置せず、あえてわずかでも「仕事」を続ける逆転の発想を取り入れる。語学研修の資金も提供する。危機的な人手不足も相まって、働き手を埋もれさせない戦略に活路を見いだす。
国内の女性の就業者数は約2700万人に上る。国立社会保障・人口問題研究所によると、第1子を生んだ女性の半数は仕事を継続している。だが数年でも仕事を離れると、以前と全く同じ業務へ戻ることができるケースは多くない。
ソニーは近く休業中でも働ける制度を本格導入する。「これまでは休業か、復帰するかという白黒はっきりした概念しかなかった」(人事担当者)が、社員の真のニーズはそこにはなかった。休業中でもある程度会社につながっていたいという曖昧さにある。
配偶者の転勤に同行する場合や介護での休業者が希望すれば、週に1日(7.5時間)~2日分の自宅での業務を認める。従来は育児休業のみが対象だった。この休業中の在宅勤務制度は男性社員も対象。ただ、これまでの育児休業の場合、取得者の多くは女性だった。休業するのは女性、という日本の職場風景は大きく変わっていないのかもしれない。ならば制度を拡充していく、というのがソニーのやり方だ。
復業を前提に、今後につながる業務に取り組んでもらう。「休んでキャリアに穴をあけたくない」「スムーズに職場復帰したい」という要望に応える。語学など会社指定の研修を受ける場合は月1万円まで会社が負担する制度も新設。スキルアップも後押しする。
国内の女性管理職比率は6.5%で、米国のソニーグループの33%に比べて圧倒的に低い。国内事業は男性技術者が多いエレクトロニクス分野が中心なことも理由だが、2020年には10%に引き上げる方針だ。休業によるブランクや離職を防がなければ達成は難しいとの危機感は根強い。平井一夫ソニー社長も「働き方改革についてありとあらゆるプログラムを組み意識改革させる」と語る。
休業ではなく辞めた社員の復職を支援する企業もある。サントリーホールディングスは妊娠や出産、育児、介護などを理由に退職する社員を対象に、事前登録すれば契約社員として1年間勤務でき、特に支障がなければ正社員として登用する制度をすでに導入。16年の利用者は13年の約2倍に増えた。味の素でも同様の制度で11人が復職している。
子育てしながら海外でキャリアを積むことを支援する動きも出てきた。三菱商事は女性社員の海外転勤に子どもだけ帯同できる制度を創設。配偶者の都合などで、自分のキャリアパスに貴重な海外勤務を諦めてほしくないとの考えだ。特別手当を出して、ベビーシッターなどの費用にあててもらう。現在、5人の女性社員が利用している。
ビジネスとしても注目を集める。人材サービスのマンパワーグループは、ここるく(東京・目黒)と業務提携し、産前産後や育児に伴う休業社員の総合支援サービス「はぐきゃり」を企業に提供し始めた。
産休・育休の準備研修やモチベーション維持を目的としたワークショップ、復職準備研修などを提供する。18年3月までに100社での採用を目指す。
指導的地位にいる女性の比率を20年までに30%に高める目標のもと、女性活躍推進法が施行されて1年が経過した。人材の新規採用だけでなく、自社内の働き手を埋もれさせない手立てが必要になってくる。
働き手のキャリア形成に詳しい日本総合研究所の小島明子ESGアナリストは「休業からの復帰支援は重要だが、子育ての負担に配慮して取り組む必要がある」と指摘している。
