「時短勤務」という選択肢【時短勤務を採用した側の視点】 — クリエイターズグループMAC

女性雇用「時短勤務」という選択肢【時短勤務を採用した側の視点】 — クリエイターズグループMAC

クリエイティブを一生の仕事にしたいと考える人に、今後のキャリアを支援するプロジェクト「しゅふクリ・ママクリ」。今回は、パナソニックグループのクリエイターズグループMACを訪問しました。同社は、昨年から「時短勤務」という働き方を採用しています。「時短勤務を採用した側」と「時短で働いているママライター」に、それぞれの視点から時短勤務について話を伺いました。今回は、「時短勤務を採用した側」である、Webプロデューサーの佐藤雅是さんに登場いただきます。

—時短で働いている人は、どのような仕事をされているのでしょうか。

 

クリエイターズグループMAC 佐藤雅是さん

時短で勤務しているサエコさん(仮名)はマスメディアンの派遣社員ですが、当社のWebチームに所属しコピーライターとして働いています。仕事内容は、主にWebサイトのコピーワークが中心ですが、取材のテープ起こしなど細かい業務も担当しています。また、Webだけではなくグラフィックの文字校閲をお願いしています。もともとサエコさんは編集の経験が豊富な方なので、文章構成能力が高いです。

—サエコさんはどのような働き方をしているのでしょうか?

サエコさんは、お子さんがいらっしゃるので、週2日をベースに10時から17時まで勤務しています。出勤いただく曜日は大体決めていますが、前の週に翌週の仕事のボリュームを確認して、状況に応じて週3日出勤してもらったりもしています。勤務時間も10時から17時までのときもあれば、10時から14時までのときもあり、仕事の量に応じてフレキシブルに対応してもらっています。

—前の週に、次の週の仕事量を確認して、そのボリュームに合わせて勤務してもらっているということですね。

はい。私は、Webチームを管理しているのですが、全員の仕事量は把握しきれませんので、サエコさん担当の社員をつけています。その社員が、前の週に来週サエコさんにお願いしたい仕事をWebチームとグラフィックチームから取りまとめて業務量を把握します。そのボリュームに応じて、サエコさんと相談して来週のスケジュールを決めています。

—仕事量とスケジュールは帳尻があうのでしょうか。

サエコさんは、もともとプロとして働いていていた方なので、業務にかかる時間を正確に把握しているようです。「この仕事量だと、時間が足りないので、もう一日出勤させてください。でも17時までかからないので14時で帰ります」というような要望がサエコさんからあります。サエコさんは、きちんと時間内に仕事を終えてくれるプロフェッショナルな働き方をしてくれていますので、とても助かっています。

—サエコさんの仕事はデスクでできるものに限られているのでしょうか。

そうですね。基本的に素材は準備してあって、ライティングをお任せしています。今は決まった仕事を依頼していますが、スキルが高いので、今後は、取材などもお願いしたいと思っているところです。本人とも相談したのですが、ぜひやっていきたいと言ってくれています。

—サエコさんの仕事を外注するという選択肢もあると思いますが、あえて、派遣で就業いただくメリットをどのようにお考えですか?

離れていてもできる仕事はたくさんありますし、いろいろな考え方があると思います。事務所で働いてもらうメリットは、やはり密なコミュニケーションができることだと思います。直したいところを文章にしてメールするより、顔を合わせて伝えるほうが早い。時短で働いてもらっている方に任せる仕事は、どうしても単発の仕事が多くなる傾向があります。働いている側も、単発の仕事でわからないことがたくさん出てきます。わからないことをその都度細かく質問できる環境のほうが効率的だと思います。

—時短勤務を採用して1年が経過すると伺っています。実際にいかがですか?

仕事が社員では回らなくなったとき、外部に依頼するか、サエコさんのような方を採用するかの選択になります。今回、コピーライターを派遣で採用してみたら、社内にいてもらった方が密に細かく仕事ができるし、スピードも違うと実感しました。また、スキルが高いプロフェッショナルな人が、派遣で時短という働き方でスキルを生かしてもらえるのは企業にとってもメリットがあるのではないでしょうか。

—御社にマッチしたということですね。

そうですね。働きたい女性は、キャリアを生かしたいとか、キャリアップしたいとか思っている方は多いのではないでしょうか。たまたま、育児などで一時期、仕事から遠ざかったとしても、フルタイムに働けなくても、そのスキルを企業で生かす方法はたくさんあるのではないかと思います。

サエコさんは時短で派遣就業した初めての例ですが、実は、現在、もう1人、週3日で10時から19時でアシスタントディレクターとして勤務してもらっています。この方も非常に優秀です。ご自身で事業を考えていて、空いている時間を自分の活動に使いたいということで、時短で働いてもらっています。もともと正社員でバリバリ働いていた方なので、正直な話、アシスタントディレクターとしては、もったいないぐらいです。

—時短勤務の方を採用しようと思ったきっかけを教えてください。

当社のコピーライターから、仕事が多いので作業的な部分を手伝える人はいないかという相談がありました。よくよく話を聞いてみると月から金のフルタイムの仕事量ではない。週に2日程度お願いできれば十分だし、それでも時間が余りそうだということもわかりましたなので、Webの仕事もお願いできればいいねという話になりました。私の友人で、時短でスマートに働いている主婦がいて、それならばスキルの高い主婦の方を時短で採用したらいいのではないかと思い、直属の上司に相談したところ、試してみようということになりました。

—佐藤さんにしても上司の方にしても、柔軟なお考えをお持ちなんですね。

サエコさんをご紹介いただいたとき、会社の雰囲気を丁寧に伝えて、仕事の内容も細かく説明しました。細かい作業が多いというネガティブな側面もしっかり伝えたうえで、「その上でこの条件で大丈夫ですか?」と念押ししました。「コピーを書く気満々だったのに、文字校正ばっかりだった」というのはお互い不幸になってしまいますから。サエコさんくらいの方になると仕事に対する考え方が超越しているというか、前にも出られるしアシスタントもできるし、本当に助かっています。

—最後に、ひとことお願いいたします。

結婚や出産をきっかけに、仕事を辞めてしまったクリエイターの中には、ご自身のキャリアを生かしたいと思っている方も多くいるのではないでしょうか。働き方が変わったとしても、ぜひ仕事でもう一度クリエイティブのスキルを発揮してほしい。そういう方たちを応援したいなと思っています。

また、時短勤務の方を採用するメリットに気づかれていない企業さんは多いのではないでしょうか。仕事が忙しくてパンパンな社員がいるのであれば、細かい作業をそのような方に分担してもらうことで、残業や休日出勤を減らすことができるかもしれません。一時期現場から離れたとはいえ、スキルの高い方を時短勤務で採用することは企業側にも、大いにメリットがあると思います。

 

—サエコさんのこれまでのご経歴を教えていただけますか。

私はもともと音楽がすごく好きで、CDショップで働いたのがキャリアの始まりです。ライターに興味を持ったのは、店舗の販売促進の一環で、手書きのフリーペーパーをつくったのがきっかけです。その時に書くことの楽しさを感じて、本格的に書く仕事がしたいと思うようになりました。その後、出版社に転職し、エンタメ系雑誌の編集を担当していましたが、転職して3年が経ったタイミングで周りからの勧めもあって、フリーランスへ転向しました。私の編集者としてのベースは、この3年で培われたと思います。フリーランスになってからは15年以上経ちますが、おかげさまで、周りの方々とのつながりの中で順調に仕事をしています。
—結婚、出産を経て働き方は変わりましたか?

そうですね。優先順位としてはやっぱり子どもが一番になりますから、仕事のやり方を変えざるを得ない状況になりました。

フリーランスだと産休はもちろんありません。0歳時から入れる保育園を探して、運良く預けることができましたが、保育料が高くって。でもフリーランスという不安もあるし、働かなきゃと思って追われるように仕事をしていました。周りから見れば順調に仕事もやっていたように見えたかもしれませんが。

子どもが小学校へ入学すると、今度は、学童問題というものが出てくるんですね。最近では、保育園の待機児童問題がメディアで取り上げられていますけど、実は小学校の学童保育へ入れない子もたくさんいて、それが働いている女性にとっては壁になってしまうんです。うちの場合、学童保育には入れたのですが、環境が変わったことで子どもが不安定になってしまって。保育園の時は朝から夜8時半まで預けて働いていましたが、学童だと先生もひとりひとりに目をかけるのが難しいようで、子どもが寂しさを感じてしまったみたいです。そばにいてあげなきゃいけない時期なんだなとすごく感じました。

また、小学生になると、宿題の丸つけなど親がケアしなきゃいけないことも多くなります。加えて仕事も家事もとやっていると、どうしてもイライラしてしまって、それを子どもも感じて不安になる。そんな状態の中で限界を感じて、思い切って仕事を減らしました。
—大きな決断だったんですね。そのなかで派遣という選択肢を考え始めたのはいつ頃ですか?

フリーランスのお仕事なので、断り続けると仕事はどんどん減っていくんですね。生活していけなくはなかったのですが、子どもが成長して手がかからなくなった時に、仕事がないのは怖いと思ったんです。

その頃、知人からマスメディアンを紹介してもらって、当初は「正社員」とか「安定性」を考えてご相談していたのですが、「フリーランスの仕事をしながら、派遣で週に数日働いている人もいますよ。」という話を伺いました。私は派遣のいろはも知らなかったんですけど、そういう働き方があるのであれば、一度やってみようかな、という気持ちでクリエイターズグループMACに応募しました。
—派遣で就業するようになって、生活は変わりましたか?

派遣では週2日をベースに、10時から17時まで働いています。派遣の仕事がない日は、子どもが学校に行った後から18時まで、フリーランスの仕事をしながら、家事もやっています。

派遣は、10時から17時ときっちり時間が決まっていて確実に帰れるのが魅力です。また安定した収入が得られるとわかっているので、がむしゃらにフリーランスの仕事を引き受けるのではなく、落ち着いて仕事をセレクトできる。今はいいペースで働けていると思います。
—その他に、派遣で働いて良かったことはありますか?

コピーライティングは、普段やっている編集やライターの仕事とは書き方が違ってとても面白いです。新しい書き方に今になって挑戦させてもらっています。コピーでは、切り口や目線が必要です。今までコピーライティングがどういうものかを正直知らなかったので、それを教わりながら少しでもやらせてもらえるのは楽しいです。

また、私のこれまでのスキルを活かせていて、社員のみなさんに喜んでいただけるのも嬉しいです。みなさんいい人ばかりで、すごく居心地がよいです。派遣で就業して1年経ちますが、恵まれた環境にとても感謝しています。
—結婚や出産後も働くことを選んだ一番の理由は何でしょう?

経済的な事情もありますけど、一番の理由はやっぱりこの仕事が好きだからです。子育てしながらで、辛い時期もありましたが、何とかここまでやってきたので、今後も可能な限り続けていきたいと思っています。
—お子さんはサエコさんが仕事をしていることをどのように思われているんですか?

一人っ子で甘えん坊の息子ですが、小学校に上がった時期に寂しい思いをさせていた実感があって、その時に仕事をやめることも考えました。でも息子に聞くと、「お母さんが仕事をやめるとディズニーランド行けなくなるからやめないでくれ」って言われたんです。「そこか?」と思ったんですけど(笑)、「お母さんは仕事が大好きなんでしょう? だからやめないで!」と……、「君にも負担がかかるよ?」と聞いたら、「大丈夫、頑張って!」と、「じゃあ、頑張る!」ということになりました。息子は、お母さんが働かないと好きなことができなくなるっていうリアルな面と、お仕事楽しそうだなっていう面の両方を見てくれているんだと思います。
—お子さんと密にコミュニケーションを取っているんですね。

息子のことはあまり子ども扱いせずに話をするようにしています。派遣のことも息子に相談しました。
良い親子関係ですね。ご主人や周りの方との協力体制はいかがでしょうか?

主人の帰りが早いときにはご飯をつくってもらったり、お互いの実家に頼ったりと、自分一人で頑張っているわけではありません。私は、周りの協力体制にすごく恵まれていると思います。
—最後に、同じように子育てをしながら働いているママクリエイターへひとことお願いします。

私も最初は派遣という働き方がうまくいくとは思っていなかったのですが、とりあえず自分の希望や条件をいろいろ相談してみて、結果、今すごくいい環境でお仕事をさせてもらっています。

フリーだけでこの仕事をするのは子どもがいれば時間も限られてくるし、経済的な理由もあってなかなか難しいと思います。全く別の職種で正社員を目指すのもひとつの選択肢ですが、本当に好きで続けたい気持ちがある方は、あきらめる前にまず一度相談してみると良いと思います。