派遣大手、能力開発に力 法改正案再提出を先取り

派遣派遣大手、能力開発に力 法改正案再提出を先取り

人材派遣大手が登録スタッフの能力開発に力を入れている。8日発表の調査結果で派遣社員時給が12カ月連続増加するなど需給逼迫が続く中、長く働き続ける人と同じようなキャリア形成ができる施策の導入を急ぐ。「派遣会社の計画的な教育」を明記した労働者派遣法改正案は衆院解散・総選挙で廃案となったが、再提出を先取りして各社は準備を進めている。

パソナグループは12月中に相談役制度「キャリアコーチ」を始動させる。研修成果の検証などをもとに、登録スタッフと膝詰めでキャリア開発を進める。専任者300人体制を構築する。

マナー、パソコン、資格――。同社主催のセミナーや研修、eラーニングなどは年々増え続けており、ざっと3万種類に上る。実はその中から将来のキャリアを考えて講座を選ぶだけでもひと苦労だ。相談員はきめ細かくアドバイスし、「育休後すぐ復帰したい」「貿易関係で働きたい」など個人の希望も考慮する。パソナの佐藤スコット社長は「次の仕事だけでなく5年後、10年後を見据えたキャリア支援の準備を進めてきた」と語る。

背景には業界を取り巻く環境の変化がある。労働者派遣法改正案は、全業務の派遣期間を「個人」ごとに最長3年とするものだった。登録スタッフは最長3年で仕事を変えなければならなくなり、継続的なキャリア形成が難しくなる懸念がある。派遣各社は今まで以上に将来を考えた能力開発の必要を迫られていた。

世界大手、アデコの日本法人は登録スタッフの能力評価を重要視する。縦軸に能力レベル、横軸にOA事務や営業事務など職種を示した事務系向けの「キャリアマップ(地図)」を導入。年明けにも試験導入する。「キャリア支援には評価指標が必要だと判断した」(川崎健一郎社長)。テンプホールディングスは月内にも社内eラーニングの内容を見直し、「キャリア形成」をテーマとする講座を新設する。

従来の構造を根本から変えようとしているのがリクルートホールディングス傘下のスタッフサービスだ。事務系派遣社員の正社員雇用を開始している。コスト増が懸念され、「奇策」との声もある中、長期的な育成には不可欠とみている。

これまで派遣各社は、企業が必要とする業務に対応できる人を探して派遣することばかりに力を注ぎ、登録スタッフのキャリア形成はあまり重要視しなかった。しかし、労働人口減少や規制強化などで環境は急変している。長期的な能力開発が進めば、産業界の競争力の底上げにつながるとみている。

求人情報サイト運営のエン・ジャパンが発表した11月の派遣社員の募集時平均時給は、12カ月連続で前年同月比プラスが続いている。足元、需要増や単価アップで派遣各社の業績は好調だが、「自分のキャリア形成をどこが真剣に考えてくれるのか」と、登録先を選別する目は厳しさを増している。能力開発を人材獲得に向けた武器として各社は位置づけている。